今月のソロプレイ第2弾は、「ドイツ装甲師団長」(アドテクノス)シナリオ7「スプリング・ハズ・カム」です。「ドイツ装甲師団長」はその名の通り、師団長を体験できる作戦戦術級で、ユニットは中隊単位で、攻撃力・防御力・移動力があります。
 システム自体は、回復-第1戦闘・移動-第2戦闘・移動とシンプルです。が、重要なのは兵種で、最も融通の利く戦車や突撃砲、駆逐戦車は、移動-戦闘が可能で、司令部や砲兵、牽引対戦車砲などは、移動または戦闘しただけで混乱状態になります。また、歩兵種だけの敵に対して戦車は攻撃力が2倍になり、戦車や駆逐戦車だけの敵へは突撃砲、駆逐戦車は攻撃力が2倍になります。このため、防御では極力、コンバインド・アームズを取ることになります。
 混乱したユニットは、活性化しているHQの指揮範囲にいれば回復ができ、また、同様の条件で敵に隣接していないユニットは、敵の攻撃フェイズに移動できるリアクション状態になれます。後方から駆けつける前線予備を表しており、高比率の攻撃のはずがリアクションで一気に低比率になったり、穴が空きそうな戦線の背後で阻止行動をしたりと、簡単なルールで自然と予備の概念が表現されています。
 そして、戦闘で決定的な要素になるのが、砲兵です。攻撃力を宣言後、敵の砲兵が防御砲撃を行うことで、一気に戦力比が変わります。投入できる砲兵数に制限がないため、(弾薬さえあれば)優勢な攻撃が自殺的な戦闘比になることも。もちろん、攻撃にも使用できますが、使用後は砲撃済みになるので、攻撃か防御か、いずれで使用するのか、知恵を絞ります。
 準備された陣地の強靱さを表すため、歩兵及び対戦車砲等が構築できる塹壕(非機械化部隊の防御力+1)と陣地(全ユニットの防御力2倍)があります。通常は塹壕を掘り、次ターンに陣地にできますが、工兵がいれば、一気に陣地の構築となります。
 これらの要素が複雑に絡み合うので、いきなり、インストしても熟練したプレイヤー相手には勝てません。一見、ルールはシンプルですが、ある程度の練度とプレイ時間が必要です。勢いで移動して、そのまま、攻撃するだけでは、まず、勝てないシステムになっています。ある意味、アドテクノスらしい捻りがきいたアイテムですね~。
 シナリオ7「スプリング・ハズ・カム」は、キャンペーン以外では最大のシナリオで、アメリカ軍70ユニット、ソ連軍83ユニット(!)という大部隊同士が、マップ全域で激突します。そう、戦後処理を巡って軋みの出ていたアメリカとソ連が、ドイツ崩壊直後に中欧で武力衝突をするという仮想戦です。ただし、アドテクノスでは、衝突の可能性は非常に高かったと、評価していました。
 ゲームでは、drで大きな目を出した側が先攻となります。先手側は、中央部にある街を占領することで、最大17点を獲得できます。が、これが両軍を引きつける罠で、街を巡って激しい戦いとなります。実はVP的には敵部隊の撃破の方が高得点で、例えば、T34のフルスタック(5ユニット)を殲滅すると、20点になります(戦車・突撃砲は1ユニットで4VP)。アメリカ軍は、ソ連軍の半分程度ですが、歩兵については1ユニットで3VPと価値が高くなっています。
 砲撃能力はアメリカ軍が極めて優秀で、ソ連軍の3倍以上の火力と、2倍の弾薬量を誇ります。攻勢砲撃支援を集中活用すれば、文字通り、ソ連軍スタックを吹き飛ばすことも可能です。が、各ユニットの能力はソ連軍が上で数も多いため、敵の高比率攻撃を避けるため、防御砲撃支援が必須で、かつ、ソ連軍の2倍という弾薬数でも、両方に使用するにはとても足りず。いい気になって敵を吹き飛ばしていたら、後半に弾薬不足で、地力に勝るソ連軍に蹂躙されるというのも、よくある展開です。
 今回は、drでアメリカ軍が先攻になりました。よって、両軍に以下のようなプランを立てました。
[ソ連軍]
 作戦的な攻撃側である。可能な限り、高火力の集中攻撃を行い、敵を撃破を狙う。当然、アメリカ軍の防御砲撃支援で比率は低下するが、それにより、アメリカ軍砲兵の弾薬を低下できる。敵の状況次第だが、中盤までは何度、撃退されても攻撃を繰り返し、弾薬を消費させ、敵の弾薬が不足またはなくなったら、全力で攻勢に出て、市街地の奪取を行う。勝負は、終盤であろう。
[アメリカ軍]
 作戦的な防御側である。市街地を軸に対戦車砲や歩兵、工兵を展開し、陣地を構築して防御効果を高める。主力は、長射程で高火力の自走砲である。初期の弾薬は豊富だが、15ターンという長丁場を考慮し、原則は防御砲撃支援を主とする。敵スタックを包囲できたときのみ、集中して攻撃砲撃支援を行う。また、可能な限り、リアクション部隊を組織し、敵の高火力攻撃に対応させる。いかに砲兵の無駄使いを防げるかが、勝敗を分ける。
 なお、ターン数も歴代シナリオ最長の15ターンあるので、AARも二つに分けたいと思います。
 第1ターン、両軍は争奪の焦点になる中央の市街地(プラハ)に向けて、全戦力を前進させます。アメリカ軍は、陣地構築の要となる工兵を高速移動させますが、1ユニットのみがコマンドチェック(CC)に成功し、市街地に辿り着きます。他のユニットは、戦力維持を優先し、(移動により自動的に混乱状態になる砲兵と司令部を除き)通常移動で前進します。
 一方のソ連軍も、戦闘集団のHQの回復力が低いため(アメリカ軍のdrで4以下に比べ、ソ連軍は3以下で回復)、原則は通常移動で前進します。東側の道路事情が若干、西側よりよいため(プラハ直前まで河川がない)、市街地郊外に快速のT34などのAFVが到着します。
T1
 第2ターンのアメリカ軍ターン、想定通り、3個の内の2個の戦闘団司令部が活性化し、混乱状態の全ユニットを回復します。AFVと偵察中隊でスクリーンを貼りながら、川沿いに防衛線を引きます。唯一、第1ターンに市街地に到着していた工兵は、早くも陣地の構築に成功します。また、距離がある北部の街へは、M4と偵察中隊が到着し、遅れて機械化歩兵と対戦車砲が郊外まで進出します。
T2A
 続く、ソ連軍ターン、中央の戦闘集団HQは活性化できず、混乱状態の対戦車砲の展開が遅れます。代わりに快速のAFVや対戦車自走砲と自動車化狙撃兵中隊が、中央から南にかけて展開。特に優速のT34スタックは、河川を渡河し、未だ、アメリカ軍が手薄な南部に進出します。
 北部では、戦闘集団HQが活性化したため、全部隊が敵に対峙する形で展開します。そのうち、快速のT34とSU85の9ユニットで、敵のM4+偵察部隊に、威力偵察攻撃をかけます。戦闘比は最高の5:1でしたが、アメリカ軍が早速、M7の防御支援砲撃(6火力)を実行し、2:1まで低下。それでも、精鋭の赤軍戦車部隊はDRとし、敵を戦術的に後退させます。
T2S 北方での攻撃
T2S
 第3ターンのアメリカ軍ターン、中央の間隙を対戦車砲と機械化歩兵の展開で埋めると、南北で反撃に出ます。北部では、前衛の歩兵中隊に5:1攻撃をかけますが、こちらはDRに止まります(確率は1/2)。南部では先鋒のT34スタックに砲兵も注ぎ込んで5:1攻撃をしますが、こちらもダイスに恵まれずDRに。敵の南部戦線に穴が空きますが、市街地を押さえ、VPで優越するアメリカ軍は、防御を優先して突出せず。
T3A 逆襲
 ソ連軍ターン、師団司令部が活性化し、混乱状態から回復した対戦車砲等が中央から南部に、塹壕を掘り始めます。南部で突出した形になったもう一つのT34スタックは、西方向に後退し、河川周辺の防衛線まで撤収します。
T3S
T3S 戦線の整理
 第4ターン(夜間)のアメリカ軍ターン、混乱状態の2個機械化歩兵中隊が敵に隣接されたため、降伏チェックを強要されますが、辛くも降伏を免れます。
 北部でも戦線を整理し、南部まで一連の防衛線構築を終えたアメリカ軍は、機動力の生かせる南部の平地へ、諸兵科連合の攻撃隊を指向します。塹壕に籠もる歩兵1個中隊を蹴散らすと(DR)、巧みな迂回行動で最南端のT34スタックを包囲下に置きます。
T4A 南部で攻撃
T4A T34スタックを包囲下に
 ソ連軍も、南部に兵力を指向し、激しい戦闘が始まります。まず、河川越しの歩兵陣地に、SU152(13火力の砲撃扱い!)を先頭に牽制の渡河攻撃を行いましたが、後方からリアクションでM24と偵察中隊が駆けつけ、戦闘比は1:1に低下し、ARとなってしまいます。
T4S 解囲を試みるも
 主力は、T34の救出に向け、敵の包囲部隊にT34やSU85の混成部隊が攻撃をかけますが、戦闘比は1:1で、こちらもARで解囲ならず。
 一方、北部ではT34とSU85スタックが、M4を含む防御部隊に、4:1攻撃をかけます。DEの可能性が高いため(1/3)、アメリカ軍は貴重な防御砲撃を注ぎ込んで2:1に低下させます。それでも、DRとソ連軍の猛威を見せつけられ、後退。第2次移動で、側面にいたM4と偵察中隊のスタックを包囲します。
T4S 北部でも攻勢
 中盤となる第5ターン、アメリカ軍は北部の連絡線を活性化するため、前ターンに北寄りに移していた師団司令部で、戦闘団司令部を回復。これにより、対戦車砲を含む全ユニットが回復し、戦線を引き直します。が、戦力集中ができず、被包囲部隊の救出はならず。
 初の戦果は、南側で起こります。前ターンに攻撃に失敗し、混乱状態になって離脱できなかったSU100に対し、2:1の包囲攻撃を行い、撃破!4VPがアメリカ軍に入ります。
 また、包囲下に置いていたT34スタックに対し、M36とM4の11個中隊(!)と集中砲撃(26火力)を投入し、4:1攻撃を実施。1/6の確率でCがありましたが、見事にDEとして、5枚スタックを粉砕します。結果、アメリカ軍に20VP(!)が加算されます。
T5A T34を撃破!
 ソ連軍ターン、南部の戦線を整理すると、手薄になった中央でAFVと突撃砲による31火力の攻撃を行います。圧倒的な火力差でしたが、アメリカ軍は12火力の防御支援攻撃を行い2:1まで比率を低下させます。が、ソ連軍も意地のDRで、攻撃を成功させます。
T5S 中央での攻勢
T5S
 アメリカ軍の強烈な砲撃で、ソ連軍の攻撃は阻止され、2個連隊規模のAFVが撃破されていますが、当初、30ポイントあった弾薬は、19にまで低下しています。
 第6ターンのアメリカ軍ターン、南部の戦闘団司令部が2ターン連続で回復できず(確率は11%、どうなってるんじゃい!)。やむなく、中央の師団司令部を、こちらに差し向けることに。優勢ではあるものの下手な攻撃はCの可能性があるため、歩兵に対してのみ、5:1攻撃をかけましたが、DRとなって実質的な成果はなし。
T6A 足止めの歩兵を高攻撃
 敵の主攻が行われた中央部に部隊を戻し、リアクション部隊を確保し、防衛線を強化します。
 ソ連軍ターン、陣地によって効果は少ないことを承知で、その中央部に高火力攻撃をかけます。集中運用したソ連軍は強力で48火力を集結し、僅か6戦闘力の敵に襲いかかります。アメリカ軍は8戦力のリアクション部隊と6砲撃力を注ぎ込んで、2:1まで戦闘比を低下させます。が、ソ連軍の気迫が勝り、DRに。戦闘団司令部が健在のため、アメリカ軍は直後に回復できるのですが、戦線をじりじりと押し上げます。
 また、同様に南でも2:1攻撃でDRにします。北部でともに被包囲下になっているT34部隊の救助に2:1攻撃を行い、Cとして、T34が死地からの撤収に成功します。
T6S 3カ所で反撃
T6S
 第7ターン、VPで優位に立っているアメリカ軍は、無理は禁物と南部の部隊を主防衛線に撤収させ、余剰部隊を中央に転用して、前線を強化します。北部では、混乱状態のM4がなぜか離脱に失敗し続け、戦線にやや偏りが出ます。
T7A 防衛隊背に入るアメリカ軍
 劣勢のソ連軍は、可能な限りの力押しを実施します。北部では、31火力を集中し、5:1としたため、アメリカ軍はリアクションと6火力の砲撃を行い、1:1でCとします。
 中央部では48火力の高火力攻撃を連続し、アメリカ軍に12砲撃力を強要し、1:1とします。結果はCも、後方にいた予備のSU85と歩兵が間隙から突入し、混乱した敵の3枚スタックを包囲します。
 南部でも2:1の攻撃を成功させ(DR)、M4/76スタックを包囲します。
T7S ソ連軍の攻撃と防御砲撃
T7S
 第8ターン(夜間)のアメリカ軍ターン、敵に接触していたM4とM24の各中隊がパニックを起こし、降伏してしまいます。これが、ソ連軍初の戦果になります(パットン指揮下のヤンキーなのに、なんということ!)。
 この流れを止めんと、アメリカ軍は中央に部隊を集結し、被包囲部隊の救出のため、4:1攻撃をかけます。と、ここで、ソ連軍のカチューシャが、初の防御砲撃!戦闘比は2:1に低下し、結果はCと救出ならず。
 一方、南部でも救出のための3:1攻撃を実施し、こちらはDRとして、包囲されていたM4/76スタックを解放します。
T8A 解囲のための攻撃
 ソ連軍ターン、一気に敵を叩かんと、中央の被包囲の敵に、カチューシャを含めた可能な限りの戦力を投入します。が、アメリカ軍は12火力の防御砲撃を叩き込み、戦闘比を1:1まで押し下げます。結果は、AR!M4/76の混乱部隊が、ギリギリで生き延びます。
 そのため、戦力を回せなかった中央市街地で、SU152スタックが5:1攻撃をかけましたが、こちらもDRと戦果にならず。
 北部でも31火力を集中するも、リアクションにより、1:1となり、AR。
 南部でも4:1攻撃を仕掛けるも、敵の砲撃により1:1に低下してCと、全ての攻撃が頓挫します。
T8S 中央部から南部での攻勢
 ここまで、気迫で突撃を続けてきたソ連軍にも翳りが見えたか?!が、確実にアメリカ軍の弾薬備蓄は低下しており、勝負は想定通り、終盤になりそうです。
T8S