今月のソロプレイ第1弾は、旧未来戦から「ヴュルツブルク」(CMJ)ケース1「前進と接触」です。昨今のきな臭い世界情勢からか、一時はFantasyと思われていた現代戦に注目が集まり、その流れでワルシャワ条約機構軍(以下、WARSAW-P軍)と北大西洋条約機構軍(NATO軍)の「冷戦」がクローズアップされています。
 このゲームも、発売が1975年と冷戦真っ只中であり、当時、想定されていたワルシャワ条約機構軍による西ドイツ(!もはや死語)侵攻を描きます。
 そのシステムですが・・・強ZOCに戦力差(!)のマストアタック、砲爆撃、スタックなし、といかにも古くさく。果たして、面白いのか、かなり懐疑的でした。が、プレイをしてみると、これが思いの他、よくできていまして。
 まず、シンプルな故に、作戦的思考に没頭できます。かつ、CRTが突撃戦闘と機動戦闘の2種類があり、現在の戦力状況でどちらを選ぶのか、全体像とその後を見越して選ぶ必要があります。一般的に兵力の多い側が相討ち上等(Exが多い)で突撃戦闘を選ぶことが多く、防御側または包囲が成り立つ側は機動戦闘を主とします。
 たとえ、突撃戦闘のCRTで最高戦力差の+12であっても、Deの確率は1/3しかなく、Exによる相互消耗か、包囲による退却不能の潰滅(いわゆる挟んでポン)が有効です。
 戦闘への効果は、荒地・森林・町・河川越しが左2シフトに固定されていて、かつ、累積はなく、これまたシンプルです。
 なお、地形的な影響では河川が大きく、全ての橋が開戦とともに破壊されている設定で、追加+3移動力がかかります。また、多くのシナリオでVPの対象となるヴュルツブルクの中央にマイン河が流れていて、退却も戦闘後前進もできないため、強行渡河の攻撃または背水の陣の防御は、極めてリスクが大きくなっています。
 地上ユニットは、数値が低めに設定されているので、高戦力差になりにくくなっています(地上兵力の機動戦闘は、押し合いへし合いばかり)。これを打破するのが砲兵で、射程(多くは7-8へクス)内への攻撃または防御に、砲撃力を加算できます。特にWARSAW-P軍は、4火力や5火力、7火力など高火力が多く、集中使用により、一気に敵の除去や戦術的突破を狙えます。NATO軍は、小火力ながら数が多いので、対砲兵射撃(敵砲兵に防御射撃をさせない)や細やかな戦力調整に適しています。
 なお、NATO軍には、射程は短いですが、高機動のヘリユニット(砲兵扱い)やシナリオによって距離無制限で使用できる航空戦力があります。
 ケース1「前進と接触」ですが、ヴュルツブルク市街地をより多く支配している陣営が勝利と、シンプルです。しかも、ターン数はわずかに6で、側面の作戦的迂回や突破による敵連絡線の遮断を試みる時間はありません。必然的に、ヴュルツブルクへの早期到達と正面からの力押しとなります。
 増援スケジュールでは、第1ターンはソ連軍が数的に有利で、かつ、道路網の設定により先にヴュルツブルク市街地に入れるので、中盤まではリードできます。が、それ以降はNATO軍の豊富な砲兵が戦線を押し上げ、ソ連軍の第2梯団との激しい市街戦になります。当初は、ソ連軍が押し気味な展開が多かったのですが、プレイを重ねると、ほぼ、イーブンに近い展開になり、最後の一振りで決まることも。
 第1ターン、両軍はヴュルツブルク市街地を目指して、機械化部隊を突進させます。移動力は同等の12ですが、地形の影響で、北端から比較的真っ直ぐなルートを進むソ連軍が、ややリードします。
T1
 第2ターン、先攻のアメリカ軍はなんとか先にヴュルツブルクに取り付きますが、移動力の都合で最南部の市街地を占領して、左右に戦線を展開するのがやっと。
 後攻のソ連軍は、優位な戦力を持って、マイン河を渡河して、アメリカ軍の先鋒を強襲します。両軍が砲撃を投入した結果、2カ所でほぼ戦力差なしの戦闘になります。西翼に展開する3-3-12機甲大隊への攻撃はBrとなり、両軍ともに後退します。中央への+1攻撃はA1となり、アメリカ軍がソ連軍を押し返します。
T2S
 第3ターン、アメリカ軍は第2段の増援を投入して、反撃に出ます。大胆にも2個機甲大隊がマイン河を逆渡河して、自動車化大隊を+2攻撃でD1とします。が、これ以外の攻撃はA1となり、2個大隊が北岸に取り残されます。
T3A
 ソ連軍は、全力を挙げて、この北岸のアメリカ軍に攻撃を仕掛けましたが、包囲した±0攻撃に失敗!もう1カ所はD1とするも、退路を塞げずに、取り逃がし、千載一遇のチャンスを失います。
T3S
 第4ターン、さらなる増援の到着で、前線戦力で一時的に優位に立ったアメリカ軍は、全面攻勢に出ます。地形効果の高い中央こそ、Brとなるものの、延翼運動で東端を回り込んで、敵の自動車化大隊を包囲殲滅。西側でも2カ所の攻撃をかけ、戦闘後前進で包囲した1個自動車化大隊をさらに後退不能で潰滅させます。
T4A
 ソ連軍は、左翼のみ、戦線を下げたものの、大量の増援を投入し、中央から東側で再反撃に出ます。東翼端を回り込んだ自動車化大隊が、敵の機械化大隊を包囲し、これを殲滅します。中央では市街地から東側に広がる森林で大乱戦となり、さらに1個機甲大隊が混戦で退路を失い、潰滅します。アメリカ軍は砲兵で部分的な優位を作るも、数の力でソ連軍が押し切り、結果、一時的にヴュルツブルク全市街地を占拠します。
T4S
T4
 すでに、終盤の第5ターン、強力な砲兵増援を受けたアメリカ軍が決死の攻撃に出ます。戦闘結果表は、相討ち上等の突撃戦闘結果表を選択。敵砲兵の防御射撃を対砲兵射撃で沈黙させると、残りの砲兵を集中して、4カ所で戦力差プラス攻撃を仕掛けます。包囲下の1ユニットを殲滅し、もう1ユニットをExで撃破します。これにより、ヴュルツブルク市街地の2へクスを取り戻します。
T5A
 ソ連軍も乱戦上等の総攻撃で、なんとか敵の勢いを食い止めようとします。東の森林で河川により退路を失った2個大隊を、潰滅させます。また、西側でも包囲攻撃により、1個機械化大隊を撃滅します。が、市街地南岸に取り残された自動車化大隊は、アメリカ軍の強烈な防御射撃を受けて、退却できずに潰滅します。
T5S
 最終の第6ターン開始時、この時点でソ連軍は市街地4ヘクスを占領、アメリカ軍は2ヘクスで、ソ連軍が若干のリードをしています。
 先攻のアメリカ軍は、全ての戦力を投入して、勝負に出ます。犠牲攻撃の-2こそ、A1となったものの、それ以外で全て勝利し、戦闘後前進による包囲で3ユニットを撃破します。ここで、占領ヘクス数は、ソ連軍2ヘクス:アメリカ軍3ヘクスと逆転します。
T6A
 ソ連軍は、最後の攻撃で再逆転を狙います。犠牲攻撃を活用して、部分的な優位を作り、全ての砲兵を投入して、中央の市街地で±0と+2攻撃を成立させましたが・・・ああ、drに祟られ、A1とAxで失敗。Axで1ヘクスを失ったため、最終的な結果は、ソ連軍1ヘクス:アメリカ軍3ヘクス(1へクスは連絡線切れで該当せず)でアメリカ軍の逆転勝利となりました。
T6S
終了時
生きて還らず
なお、ルールに未確認があったので、CMJに問い合わせました。プレイされる際のご参考に。

Q: 7.9 戦闘後前進について
 「敵の後退路に沿って戦闘後前進できる」とあるが、自軍ZOCで包囲した敵がD#の結果により退却不可能で除去された場合、攻撃側はどのように戦闘後前進できるのか。
 同様に、(ヘリコプター以外の)ユニットが河川で後退できずに除去された場合、攻撃側はどこまで戦闘後前進できるのか(河川越えの戦闘後前進は可能か)。

A:「退却不可能で除去された場合」ですが、消滅したものと同様と考え、1ヘクス目はそのヘクスに入らなくてはならないと考えます。その後の前進経路については攻撃側の任意に「後退を要求された結果数」だけ追撃できると判断してください。
 河川越しの戦闘後前進に関しては、河川を渡って後退することができないことを根拠に(12.1.2項)追撃もできないと判断します。ただし、ヘリコプターはその例外に当たり、先に記載した通り「結果数」と同数の追撃が可能とします。