今月のソロプレイ第1弾は、昭和末期の仮想戦アイテムの「レッドサン・ブラッククロス」(アドテクノス)からシナリオ1「レイズ・ザ・カーテン」です。
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  「レッドサン・ブラッククロス」(アドテクノス)は、第二次世界大戦に勝利したドイツとアジアの覇権を確立した日本が、インド大陸を主戦場に覇権を争うという、完全な仮想戦です。
 発売された当時の昭和末期は、書籍を中心に仮想戦ブームが起こっていました。このブーム自体は、史実の都合の良い部分だけを改変(改竄?)したり、あるいは全く兵站や戦力を無視した荒唐無稽の設定だったりと、「戦艦大和は世界一!」的なぶっ飛んだ内容がほとんどでした。当然ですが、歴史的な裏付けのないイロモノ扱いで、ブームは終熄するのですが、このRSBCの「改変」は徹底していまして。そもそもは、日本軍が日露戦争の陸戦で惨敗するところから始まります。これにより大陸支配を諦めた大日本帝国は、海軍を中心に、半世紀早い貿易国家としての生き残りに舵を切ります。当然、日中戦争はなく、また、アメリカがモンロー主義で閉じこもったため、太平洋戦争もなし。
 一方、バトル・オブ・ブリテンに勝利したドイツ軍は、ゼレーベ作戦を敢行し、イギリス本土を占領します。続いて、全力を投入した独ソ戦で史実を上回る大戦果を上げ、スターリンが暗殺されたことから、ソ連が崩壊。イギリスはカナダに亡命政府を樹立し、援助の見返りにインドを含めたアジアの利権を日本に譲り渡します。こうして、産油地帯の中東までを押さえた連合軍とインド以東を押さえた枢軸軍(日英軍)がバッファーゾーンのアフガニスタンで軍事衝突に至ります。
 これがSLGamerにも刺さる内容でして、専用冊子の「ヒストリカルノート」まで。詳しくは、別記事「令和の代に、ちはら会でレッドサン・ブラッククロスを!!」をご覧ください。
 ゲームのシステムとしては、OS(主導権)の決定-補給-両軍の航空作戦-陸軍作戦-両軍の航空作戦(2回目)となっています。通常は、陸海空の三軍のいずれかが主で、他が補完するのが多いのですが、このゲームは三軍がほぼ同じ比重という珍しい構成です。1へクスは100kmで、当然ながらスタック制限はなし(空軍のみ、基地に展開できるユニット数を制限しています)。
 まず、OS(主導権)の決定では、両軍がdrをして、大きい側が先手か後手かを決定します。このシナリオは特別ルールでドイツ軍が全て先手ですが、他のシナリオではdrを修整できるOSポイントが当てられていて、どこで主導権を取るか、判断を求められます。
 補給では、陸軍ユニットの回復と航空ユニットへの補給があります。後で触れますが、機械化ユニットは移動しただけで1ステップロス、攻撃を実施すると戦闘結果に加えて1ステップロスと、その消耗ぶりは驚くほどです。さらに、航空ユニットは維持だけで(稼働しなくても)1ユニットに付き2ポイントが必要で、消耗状態の場合は、回復に4ポイントを消費と、尋常でない「金食い虫」です。1ターンに2回行動できるのが、せめてもの救いですが。
 航空作戦は、出撃-到達判定-空戦-対地攻撃です。この到達判定が曲者で、9へクス内の出撃は1d6して3以上で到達でき、10へクス以上なら4以上です(ただし、味方がいれば、dr+2)。そう、大量の補給を消費して出撃しても、1/3以上の確率で到達できないばかりか、修整前に1を出すと消耗するという、リスキーさです。が、例えば、重爆撃機(12火力)が到達できれば、敵の補給基地や飛行場、消耗した飛行機などに平均で2ヒット以上を与えられます(陸軍だと平均1ヒット)。場合によっては、空爆だけで装甲師団を吹き飛ばすことも可能で、原則は爆撃機を集中する猛爆撃が基本になります。
 手順としては、到達した飛行機同士で空戦となります。このシナリオではドイツ軍に唯一のジェット戦闘機Me262がいて強力ですが、日本軍もレシプロ機ながら5式戦闘機と6式戦爆と数では優位に立てます。その後、爆撃機が対空砲火を受け、生き残った機が爆撃を行います。
Me262
 続く、陸軍作戦では、先手-後手が順に移動し、同時に戦闘を解決します。変わっているのは、同一へクス内戦闘の概念で、各ユニットは敵がいるへクスの移動力を消費し、防御へクスマーカーを載せます。そのまま、敵が後退しなければ戦闘になりますが、移動したユニットは1ステップロスをするため、装甲師団は攻撃前に1/3程度の戦力を失います。戦闘解決自体は通常の戦闘比のため、簡単ですが、先に触れたように攻撃側はさらに自動的に1ステップロスをします。よって、フル戦力の機械化師団がdrによっては一気に潰滅直前(4ステップ目)になることも。攻撃側が勝利すると、自動的に戦闘後前進となります。
 ちなみに移動中に戦力比が7:1以上(修整後)になれば、+1追加移動力でオーバーランができます(無条件除去)。終了後に、追加の1ステップロスはするものの、初期の戦力のまま、攻撃ができ、確実に敵を殲滅できるので、可能ならこれを行いたいものです。
Panther2
 そのためには、事前に空爆で敵を消耗しておくことが有効で、「金食い虫」の空軍が欠かせないことになります。また、陸上作戦の後で、2回目の航空作戦があるので、ここで消耗した敵に致命打を与えることができます。特に陸戦で消耗した敵には、脅威です。
 なお、発売後、アドテクノスから重要なエラッタが発表されています。影響が大きいのは戦闘で、D1-3の戦闘結果を受けても退却しなくてもよい(してもよい)となりました。このため、防御側が最後の1ステップ(4ステップ)まで抵抗できるようになり、消耗戦の度合いが高まりました。ゲームでは、ドイツ軍が攻勢をかけることが多いので、相対的に守りの日英枢軸軍が有利かと思います。
 続いて、シナリオ1「レイズ・ザ・カーテン」の解説です。このシナリオは1948年に開戦となる第三次世界大戦の前哨戦で、先の対戦が終了間際(1945年3月)に中東に駐留するドイツ軍が、バッファーゾーンのアフガニスタンに攻撃をかけるというものです。インドに展開していた日本陸軍は、アフガン政府の要請を受け、救援に駆けつけます。
 戦力としては、ドイツ軍が2個装甲軍集団(増強された5個軍相当)と第2航空軍で、日本軍が戦車1つを含む5個軍と第3航空師団(戦闘機と戦爆中心)です。これにアフガン軍6個師団(当初は3個師団)が加わります。何度か、ソロをしてみましたが、エラッタの適用で強制DRがなくなったので、ヘラートは失うものの、カブールで頑強な抵抗が続き、ほぼ日本軍が守り勝つバランスです。ただし、航空作戦の影響が大きいので、ルフトヴァッフェが大活躍すれば、ゲーム上の引き分けはあるやもしれません。
 いずれにしろ、ドイツ空軍の活躍と適切な陸上補給が肝になるので、今回は以下のような作戦を立てました。
①第1ターンに、陸空の全力を持ってヘラートのアフガン軍を叩き、これを占拠する。
②その後、(第2ターン増援のGD装甲軍団を含む)カスピ軍集団と第46装甲軍団を持って、カブールに接近する。
③この間に、潤沢な補給を空軍に振り分け、ルフトヴァッフェで航空撃滅戦を仕掛ける。航空優勢を取ったら、集中爆撃を実行する。まずは、敵の補給路のカイバル峠を狙い、空爆で守備隊が消耗したら、GD装甲軍団のオーバーランを行う。
④その後、可能なら補給切れとなったカブール攻略を目指す。
 日本軍の作戦計画は、以下の通り。
①第1ターンにインド国内の陸軍を、カブール及びカンダハルに進出させ、守備体制を固める。この時、カイバル峠には、2個師団を配置し、インドからの補給路を確保する。
②増援の第15軍がカンダハルに到着したら、敵の前進状況を見ながら、カブールへの増援またはヘラート奪還を目指す。
③陸軍航空隊は、敵爆撃機の邀撃に努める。ただし、五式重爆は単独でも敵の前線補給基地または消耗している飛行機を狙って、爆撃を行う。
 まず、セットアップですが、全てのドイツ軍はアフガン領に隣接する道路上に配置します。補給を前ターンに割り当てを決めることになっているので、ドイツ陸軍に消耗する第46装甲軍団向けに8ポイント、空軍に22ポイントを割り振ります。
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 第1ターン、ドイツ軍は計画通り、第1航空作戦でヘラートのアフガン軍に全航空機を割り当てます。日本陸軍航空隊は航続距離で届かないため、待機となります。到達判定で3ユニットが到着できずも、残りの22火力(2火力×11回)で爆撃を行います。期待値では2ヒット程度が見込まれましたが・・・ああ、全弾、外れに。
航空1でヘラート爆撃も・・・
 一発でも当たっていれば、第46装甲軍団のオーバーランができたのですが、やむなく装甲軍団と第29軍団を投入して、5:1攻撃をかけます。ここは辛くもDEとしましたが、この攻撃で14ステップロス(!)と、予想外の消耗を被ります。
やむなく、DPKの全力攻撃
Loewe
 日本軍は、都市の防御陣地を固めるべく、カブールに4個師団を進め、2個師団でカイバル峠を守ります。また、第1戦車軍をカンダハルに進出させ、第25軍をカブール方面に前進させます。
 続く、第2航空作戦で、ドイツ空軍は航空撃滅戦を兼ねて、カブール爆撃を行います。が、互いにdrが低く、ジェット戦闘機Me262の攻撃で五式戦闘機が消耗するも、他は損害なし。6回の爆撃(各2火力)も効果なしになります。
Ju290H
 一方、日本陸軍航空隊も六式重爆でDPKの前線補給基地を狙いますが、これは航法ミスで到着できず。
六式重爆でFSHを狙うが
 両軍ともかなりの航空作戦を行うも、予想外の低drで補給ポイントを消費しただけになります。
 第2ターン、ドイツ軍に強力なGD装甲軍団が、日本軍に4個師団からなる第15軍が登場します。
 補給フェイズにドイツ軍は、大消耗した第46装甲軍団の回復にポイントを回します。一方、潤沢な補給を割り振った空軍では、各3個の戦闘機隊と爆撃隊を稼働状態にします。日本軍は、歩兵2個軍と第1戦車軍を完全戦力とし、航空機は戦爆4ユニットを活性化します。
 このターンは、ドイツ軍の陸上兵力が消耗と遠距離のため、空軍同士の戦いが主となります。第1航空作戦で、ドイツ軍は2ユニットの戦闘機と3ユニットの爆撃機をカイバル峠に投入。日本軍は全戦闘機(と戦爆)で迎撃します。強力なMe262が五式戦闘機を撃墜するも、六式戦爆によってJu290の2ユニットが撃破されます。空爆は4火力のみになり、またもヒットはなし。これで爆撃は、18回とも戦果なしです(平均値なら3発は命中しているはずですが)。
航空1
激しい空戦
 続く、陸軍作戦は、双方とも増援の移動のみに。カブール空襲では、ドイツ軍の到着drが酷く、辿り着いたのはMe262のみ。これに対し、日本軍はレシプロながら3倍の戦力で襲いかかりましたが、日本軍の戦果はなし。代わりに、Me262がまたも5式戦闘機を叩き落とします。さすが、精強無比なシュヴァルベ!
航空2
T2終了時
 第3ターン、ドイツ軍はGD装甲軍団を回復させ、カブールへの接近を図ります。一方、空軍は豊富な補給で3個戦闘機隊を維持し、爆撃機も1つを稼働状態とします。日本軍の回復は4ユニットの航空機のみとして、後のために補給を貯めます。
 第1航空作戦では、ドイツ軍が果敢に爆撃を繰り返し、日本軍も2ユニットの戦闘機(戦爆)で迎撃します。結果、Me262とTa152が消耗し、六式戦爆が撃破されるという、消耗戦に。この結果、日本陸軍の戦闘機は、わずかに1ユニットになります。
航空1
ドイツ軍の戦闘機が大消耗
 一方、アフガン奥地に侵攻した五式重爆は、ついに敵の前線補給基地を発見し、12火力という凄まじい爆撃を行います。これにより、DKKの前線補給基地は2ダメージを受け、一時的に補給と飛行場機能を失います。
六式重爆の威力!
 第2航空作戦ではともに消耗が激しく、出撃機数が激減します。それでも、健全な五式重爆が再び、敵の補給基地の飛行場を狙います。対空砲火をくぐり抜けた攻撃により、仇敵のMe262を地上で撃破することに成功します。
T3終了時
 第4ターン、ドイツ軍はDKKの前線補給基地とカイバル峠に隣接したGD装甲軍団を回復させます。また、空軍に多くの補給ポイントを振り分け、2つの戦闘機部隊と4つの爆撃機部隊を再稼働状態にします。日本軍は、わずかに2ユニットになった航空ユニットを準備状態とし、残りの補給はさらに蓄積します。
 第1航空作戦では、ドイツ軍がカイバル峠に航空5ユニットを投入し、爆撃による敵の消耗を狙いましたが、2ユニットが未着の上、爆撃drも相変わらずの酷さで、ヒットなし。ああ、延べ23回の爆撃を行って、全く当たらないとは!
T4 航空1
 一方、DKKの前線補給基地を狙った五式重爆と六式戦爆は、またも未着と、両軍とも精彩を欠きます。
 仮にカイバル峠の歩兵師団が2ヒットを受けていれば、増強したGD装甲軍団で蹂躙できるはずでしたが、未ヒットのため、陸上作戦は待機のまま。                      
 第2航空作戦では、ドイツ軍が意地でカイバル峠守備隊に1ヒットを与えるも、ターンエンドのため、事実上の無駄骨に(次ターンに即回復)。ただし、DKKの前線補給基地を狙った五式重爆と六式戦爆には、Ta152が迎撃に成功し、制空任務に切り替えた六式戦爆を排除することに成功します(これで日本軍の戦闘機は全滅に)。五式重爆は対空砲火に阻まれ、爆撃できず。
航空2
 すでに終盤となった第5ターン、ドイツ軍は第1航空作戦でなおもカイバル峠守備隊を狙いますが、惜しくも1ヒットのみで、またもオーバーランできず。
 対して、単独で侵攻した五式重爆は、防空戦闘機の迎撃を受けるはずでしたが、なんとTa172が1を出して、制空任務に失敗します(かつ、消耗)。五式重爆は、対空砲火を冒して、猛烈な爆撃を実施し、DKKの前線補給基地に一気に3ヒットを与えます。
航空1
 陸上作戦は、またもドイツ軍は動きなし(というか、敵の守りが崩せず、攻撃を取れない)。対する日本軍は、増援の第25軍がカンダハルに到着したため、反撃の準備で第15軍と第1戦車軍をヘラートに向かって前進させます。
 第2航空作戦でも、ドイツ軍は奇跡を願って、カイバル峠を爆撃し、さらに1ヒットを与えますが、そこまで。五式重爆は長距離能力を生かして、今度はDPKの前線補給基地を狙いましたが、こちらは到着できず。
T5終了時
 最終の第6ターン、ドイツ軍には、もはや強襲しかない。装甲部隊に補給を回すと、第1航空作戦でカブールの守備隊に2ヒットを与えます(ああ、これがカイバル峠で出ていたら)。そして、GD装甲軍団と第46装甲軍団を投入して、通常攻撃を加えます。戦闘比は1:1でD1としたものの、ドイツ軍も大消耗し、戦線は動かず。
陸上戦闘

陸上戦闘
 一方、日本軍も敵の補給路であるヘラート奪還に、第1戦車軍と第15軍を差し向けます。戦闘比は3:1と一発でDEもあり得ましたが、結果はD2。日本軍が消耗したものの、ヘラートの守備隊も崩壊一歩手前に。
一式中戦車
 すでに勝敗は決していますが、第2航空作戦でドイツ軍は最後のあがきを見せ、カブールのアフガニスタン師団を猛爆撃し、これを潰滅させます。が、刻すでに遅し。アフガニスタンの2都市を確保した日本軍の勝利となりました。
航空2
 それにしても、ルフトヴァッフェの空爆の酷さときたら・・・。最終ターンこそ、爆撃を成功させましたが、この前には一発も当たらず。戦闘機部隊が日本軍の戦闘機を全滅させているのもかかわらず、空爆drの不調が最後まで響きました。もし、カイバル峠で被害を与えていれば、オーバーランでここを押さえて、カブールの守備隊を補給切れにでき、場合によっては、カーブルの奪取も夢ではないのですが。それでも、エラッタ適用のルール上は、引き分けがやっとでしょう。
終了時