今月のソロプレイは、南方軍集団の苦く困難な撤退戦を描いた「ESCAPE TO NOWHERE」(CMJ)です。43年後半の攻勢で、圧倒的な兵力差を持ってキエフを占領し、カルパチア山脈に追い込んで、敵を殲滅せんとする赤軍。もはや戦線維持できるかさえ危ぶまれるドイツ軍が、薄氷を踏むような機動防御で、ギリギリ崩壊を免れるか、というテーマです。この戦いの最中で、ドイツ軍の最高の頭脳-マンシュタイン元帥は、確地戦略を命ずるヒトラーと対立し、軍集団司令官を罷免されています。
T0
 システムは、1ユニットずつが移動と戦闘を繰り返すという、相互行動シークエンスです。将棋やチェスのような駆け引きがあり、前作「第6軍を救出せよ!」(CMJ)を踏襲しています。これに、極一部の地域に影響を与える嵐やコラムシフトができるソ連軍の空軍力、準備下攻撃の有利と機動攻撃の不利等が、表されています。
 早速、ソロ演習をしてみましたが、圧倒的戦力で攻勢に出るソ連軍を、間一髪で躱そうとするドイツ軍の展開は、そそられるシュチュエーションでした。ただし、やりこんでくると、ソ連軍の攻撃能力が尋常ではなく、枢軸軍の戦線が早々に崩壊することがわかり。drに恵まれても、第4ターンまで持てば上出来か。一度、崩壊すると、プレイアビリティを高めるためにユニット数が少ないことと、移動力が高すぎる(機械化部隊は18移動力!)ことが影響して、ほぼ枢軸軍は全滅となります。
 せめて史実に近づけるために(最終ターン近くまではゲームが続けるように)、以下の改良ルールを導入してみました。
*戦闘で後退を行うことで、損害を半分(端数切り捨て)にできる。この時、DEの後退結果は、0/2と読み替える。
*ソ連軍は威力偵察(ZOC浸透)は行えない。
*ソ連軍の移動力は、機械化が9移動力、非機械化が5移動力とする(元ルールの半減)。  こうすると、なんとか、ゲームが壊れずに、終盤まで続けられることがわかりました。それでも、ソ連軍の勝利を防ぐことは至難の業ですが、今回は、このオリジナルの改良ルールを使ってのプレイとなります。
 まず、セットアップですが、全て固定になります。ドイツ軍が先手ですが、危ない箇所が3カ所あります。北部では装甲軍団が+20火力の攻撃を受け得ます。中央部では歩兵軍団が包囲下で+25火力の攻撃を受けます。そして、南部では歩兵1個軍団及び消耗し尽くした装甲軍団が包囲の危機にあります。中央部の歩兵軍団はソ連軍がミスをしない限り救えませんが、ドイツ軍は第一手で、北部または南部のいずれかを救出できます。
T0 攻撃想定
 第1ターン、今回は、敵戦力が最も強力な南部で防衛戦力を維持するため、#2703の第17歩兵軍団を後退させます。ソ連軍は、すかさず、狙撃兵軍団を派遣し、逃げ遅れた装甲軍団を包囲します。
T1 ともに第一手
 ここから、ソ連軍の猛攻が始まります。#1910の第11歩兵軍団を空軍を投入した最大比率で抹殺します。続いて、南部で孤立する装甲軍団を包囲殲滅します。その勢いでニコポリを占領すると、戦線を張る敵歩兵軍団を+20火力でDEとします。歩兵軍団は溜まらず後退し、0/2に結果を変更します(オリジナル改訂ルール)。
T1 南部でも攻勢
 また、北部でも2カ所の+20火力攻撃を仕掛け、自軍も損害を受けながらも敵に2ステップロスを与えます。 
T1 最北端でも攻撃
 結果、このターンの枢軸軍の損害は、のべで9ステップロスに。毎ターンの補充が2ステップ分しかないので、このまま、消耗戦を続ければ、枢軸軍は危機に陥ります。
T1
 第2ターン、ソ連軍の攻勢が続きます。コルスン南方で最大火力+30で攻撃を行いますが、これはdrに恵まれず、後退により1/1に。
T2 中部で高戦力差攻撃
 その分、南部では+20火力攻撃がDE(後退により0/2)となり、また、北部では装甲軍団が1ステップロスを受けます。
T2 南部でも・・・
T2 北部でも・・・
 このターンの枢軸軍の損害は6ステップロスで、戦線は維持しているものの、前線戦力の消耗が続きます。
T2
 第3ターン、ソ連軍は南部の戦力の一部をペレスコ地峡に派遣し、クリミア攻めを開始します。+10火力でしたが、1/3(後退により1/1)で敵を後退させます。
T3 クリミア半島で攻勢も・・・
 最も強烈な打撃力を保持している南部では、最南端付近の敵に+25火力攻撃をかけ、やはり1/3(後退により1/1)で敵の戦線を圧迫します。ドイツ軍は堪らず、ケルソンを放棄し、インフル河東岸に撤退します。
T3 ニコラエフ近郊の戦い
 北部でも+20火力でDE(後退により0/2)を叩き出し、じりじりと西に向けて戦線を拡大します。
T3 北部でも連続打撃
 このターンの枢軸軍の損害は5ステップロスで、中央部こそ、初期戦線を維持しているものの、北部と南部で圧迫を受け、戦線の乱れが生じ始めています。
T3
 第4ターン、主導権を完全に握ったソ連軍は南部で、+15火力と+30火力の集中攻撃をかけます。さらに、後方予備を投入して、追加の1ステップロスを与えます。後退で軽減しても4ステップロスを受けたドイツ軍はたまらずインフル河の防御線を放棄します。
T4 南バグ河の攻防
 北でも、伸びきった戦線に集中攻撃をかけ、2ステップロスを与えます。
T4 北部での延翼
 枢軸軍にとっての救いは、クリミア半島と中部のコルスン防衛戦で、2/0と一方的に敵の損害を与えたことか。
 第5ターン、南バク河を渡河したソ連軍は、+25火力の攻勢を続け、DE(後退により0/2)とします。枢軸軍はやむなく、崩壊した戦線の穴埋めに装甲軍団を派遣しますが、これにも連続攻撃で1/2(後退により1/1)を与えます。
 また、クリミア半島では補充で戦力を回復した歩兵軍団が攻撃を実行し、ついにペレスコ地峡を突破します。ドイツ軍はケルチ守備隊も後退させ、シンフェロポリに防衛線を引きます。
T5 南部の敗走
 さらにソ連軍は、北で+15火力、中央で+10火力、コルスンの包囲攻撃で、敵に3ステップロスを強要します。
 のべ7ステップロスと相当に消耗した枢軸軍は、一部の部隊を足止めに残し、戦線を戦術的に後退させます。
T5
 第6ターン、枢軸軍に待望のイタリア軍の6個守備隊(町に配置でき、限定補給と2コラムシフトを与える)が来ます。今後の展開を考え、中央部と北部に配置します。 
 敵が消耗し、攻撃火力が上がったソ連軍は、全面攻勢に出ます。クリミア半島のシンフェロポリ攻防戦では、ソ連軍が0/4(後退により0/2)を与え、ここを奪取します。
T6 クリミア攻勢
 主戦線では、南部・中央部・北部の順に戦線の屈曲部に攻勢をかけ、敵を著しく圧迫します。枢軸軍はもはや持ちこたえられず、大幅な撤退を開始しますが、この混乱の中で第48装甲軍団が赤い津波の中に呑み込まれます。コルスン守備隊と第48装甲軍団はかろうじて、包囲下で存続します。
T6 南部の猛攻
T6 中央部も圧迫される
T6 包囲下で猛攻を受ける装甲軍団
 このターンの枢軸軍の損害は、補給切れを含めて7ステップロスと、厳しさを増します。
T6
 第7ターン、ゲームは終盤に入り、ソ連軍の航空支援はこのターンまでとなります。決定的な戦果を上げたいソ連軍は、猛烈な攻勢をかけます。
 まず、中央部で包囲下で損耗している第48装甲軍団を、圧倒的な戦力差で殲滅します。これにより、非補給下で撃破された枢軸軍が3ユニットとなり、1つ目の勝利条件を達成します。さらに、+20火力攻撃で歩兵軍団を後退させます。ドイツ軍は虎の子の第57装甲軍団を急派して、なんとか間隙部を塞ぎます。
 続いて、クリミア半島では、セヴァストポリへの隘路を守る敵の2個軍団に+20火力の攻撃をかけ、これをDE(後退により0/2)にします。ドイツ軍は遅滞防御を行いながら、セヴァストポリに向けて退却します。
T7 シンフェロポり
 北部でもヴェニツァ南方に+20火力の攻勢をかけ、敵部隊を消耗・退却させます。これにより、枢軸軍は北部全体を戦術的後退させざるをえず、ジトミールとベルデチェフを失います。
T7 北部の攻防
 そして、主攻勢軸の南部でも、中央付近の敵歩兵軍団を撃破します。南部崩壊の危機に、枢軸軍は要衝オデッサの放棄を決定し、一部をドニエストル川東岸へ待避させます。ソ連軍は無人のオデッサを奪取し、2つ目の勝利条件を達成します。これにより、ソ連軍の敗北はなくなりました。
T7 南部でも・・・
T7 南部の連続攻撃
T7
 第8ターン、あとはセヴァストポリの攻略か、ドイツ軍の陸上補給へクスを占領すれば、ソ連軍の勝利が確定します。航空優勢を失ったソ連軍は、前ターンまでの勢いを失いつつも攻勢を続行します。
 クリミア半島では、セヴァストポリ攻防戦が開始となりますが、前ターンに枢軸軍が効果的な遅滞戦術を行っていたため、火力はわずかに+3差に。それでも、執念のdrで1ステップロスを与えます。
T8 セヴァストポリ攻防戦
 それ以外にも、北部で2回、中央部で1回、南部で1回の攻撃をかけます。しかし、空軍支援のない攻勢は効果薄で、全て1ステップロスのヒットに止まります。
 枢軸軍は、最強の第2SS装甲軍団を南部に投入し、ドニエストル川を軸に防衛線を構築します。
T8
 最終の第9ターン、ソ連軍は総花的な攻勢を実施します。
 セヴァストポリでは+5火力の攻撃を実行しますが、drに恵まれず、陥落せず。
T9 セバストポリ墜ちず
 これが最後と、北部で1回、中央部で1回の攻撃をかけます。が、ともに1ステップロスのヒットのみ。
 残された可能性は、南西部の陸上補給へクスの占領に。ソ連軍は準備攻撃でドニエストル川を渡河すると、後続部隊が雪崩れ込み、装甲軍団を含む敵部隊との平地での死闘を繰り広げます。が、機動攻撃の不利なシフトが祟り、2ステップロス以上の損害は与えられず。
T9 ドニエストル川強襲
T9 なおも押し込む
 終わってみれば、激しく損耗しながらも枢軸軍が最後の戦線を維持したことで、引き分けに終わりました。あと、1ターンあれば、セヴァストポリの陥落か、陸上補給へクスの占領もあり得た結果でした。
T9 終了時