今月のソロプレイ第10弾は、「スターリングラード戦役~ヒトラー最大の敗北~」(旧GJ)です。いわゆる1942年の枢軸軍の攻勢とソ連軍の反攻を描く、戦役級です。
 1942年戦役と言えば、ヴォロネジからスターリングラード、コーカサスまで、作戦級の戦場としては広大ですが、当時の雑誌のコンポ制限からハーフマップとユニット数100程度が、精一杯だったようで。特別ルールが多いように感じるのはこの制限のためで、その中で史実らしさを再現できている点は、見事といっていいでしょう。デザイナーのふーらー中村氏は、後に「進化版」といえる「激闘!スターリングラード電撃戦」(GJ)をリリースしており、こちらは傑作「激マン」システムで安定の仕上がりです。
 このゲームの肝は、ランダム・インパルスと作戦ポイント(OP)です。ターン開始時に両軍はdrして、大きい側がインパルスを実行できます。インパルスを取れば、自動的に1へクスの移動が保証されますが、通常移動力を発揮するには枢軸軍は6スタック価ごとに1OPを、ソ連軍は司令部ごとに1OPを消費する必要があります。ZOCは弱ZOC で、1へクス移動や通常移動でも浸透ができます。
 戦闘も同様で、枢軸軍は1カ所ごとに1OPを、ソ連軍は司令部ごとに1OPを消費します。OPは当然、十分とは言えず、相当、ポイント配分に悩みます。
 勝利条件は、枢軸軍が第7ターン終了時に、5VP以上を獲得していることです。大都市で1点、ヴォルガ川に隣接していれば1点、盤外ボックスへの突破で1点です。ロストフは確実に取れるとして、残り4点をどうするか。北方重視なら、ヴォロネジを攻略してモスクワ方面への突破を行い、あとは2点を南部で取ります。が、ここは、ソ連軍の増援も展開しやすく、達成度はかなり高めです。史実のように、スターリングラードとコーカス方面への展開なら、少なくともスターリングラードの占領とマイコプ、グロズヌイの占領が必要になります。盤外への突破は、よほどソ連軍が下手を打たない限り、厳しいので、いかに適切に兵力を配分して、タイミングよく3カ所を攻略できるかが重要です。ちなみに、史実ではスターリングラードとグロズヌイの占領ができず、3VPで枢軸軍が敗北しています。
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 序盤に史実通りにドイツ軍が、ドネツ・ポケットを形成し敵の部隊を包囲殲滅できるか、ソ連軍がそれを防げるかで、展開は大きく変わってきます。史実並の戦果が挙がれば、ソ連軍は頼みの増援の多くをドン河沿いの防衛に回さざるを得ず、必然的にスターリングラードやコーカサス方面が薄くなります。逆に主力の退却が成功すると、二方面の兵力が増強でき、枢軸軍はかなり厳しくなります。
 第1ターン、特別ルールで枢軸軍の攻勢からスタートします。ただし、第1装甲軍と第17軍は、第一撃では使用できず。第4装甲軍と第2軍による第21軍への力攻は5:1で2Rとなり、敵を敗走させます。ソ連軍は、突破(2へクス前進)をさせないよう、ユニットをバラして、後退します。第6軍による第38軍への攻撃はオーバーキルとなり、機械化部隊が浸透します。
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 ここでドイツ軍インパルスが来ていれば、ドネツ・ポケットを作れたのですが、イニシアチブはソ連軍に。ソ連軍は全戦線を後退させます。
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 第3インパルスはドイツ軍で、気を取り直して2カ所で前線部隊を攻撃し、再び、突破口を開けます。が、第4インパルスはソ連軍で、ギリギリのところで戦線を後退させ、躱されます。
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 第5インパルスはドイツ軍で、三度目の突破口を明け、包囲のために1OPは残しておきましたが・・・ああ、ソ連軍インパルス。
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 結果、敵戦線を押し下げたのみで、肝心の包囲殲滅には失敗してしまいます。3回のうち一度でも枢軸軍インパルスが連続していれば、殲滅できたのですが・・・。ソ連軍部隊は、史実と異なり、ドン河北側の撤収に成功し、強固な防衛線を構築してしまいます。枢軸軍にとっては、相当、厳しい展開です(ほぼ、詰んだか?!)。
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 第2ターン、もはや北部強襲は、不可能。ならば、スターリングラードを落とす以外にない!腹を決めた枢軸軍は、中央の敵2個軍を包囲すると、機械化部隊の8割をスターリングラードに転進させます。
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 同時に、ドン河を渡河した装甲師団が敵の退路を遮断し、ロストフ近郊の2個軍を殲滅します。
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 第3ターン、潤沢な増援を得たソ連軍は、これをスターリングラード方面に投入し、ドン河とアクサイ川に戦線を引きます。が、集中したドイツ軍の装甲部隊の破壊力は、尋常ではありませんでした。2枚スタックの敵戦線を一点集中でこじ開けると、連続インパルスでこれを撃破。突進力を生かした戦闘後前進で5個師団相当を包囲してしまいます。
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 ソ連軍はなまじ増援があったたため、救出部隊を派遣し、一時的に連絡線の確保に成功しますが、ドイツ軍の再攻撃で救出部隊ごと、包囲下になってしまいます。
 最も影響があったのは、スターリングラード後方の渡河点でした。ここは、ヴォルガ河越しで戦闘力1/4でかつ湿地のため、まず、攻撃成功の可能性はなかったのですが、救援部隊を出したばかりに手薄に。それでも、戦闘比はかろうじて成功の可能性のある1:1のみ。ここを取れれば、スターリングラードの命運を決められることから。ドイツ軍は強引に攻撃をかけます。確率は、わずか1/6でしたが・・・なんと成功!これにより、ソ連軍はスターリングラードに援軍を送れない事態になります。
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 第4ターン、ソ連軍は慌てて奪還のための増援を送り込みましたが、攻撃準備を完了する前に、ドイツ軍が強固な防御線を引き、奪還不可能に。枢軸軍は、スターリングラード市街地に4度にわたって包囲攻撃をかけ、陥落寸前に追い込みます。
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 一方、南部では3個の歩兵軍団と2個装甲師団で、マイコプを攻略し、最終目標のグロズヌイへ向けて前進します。
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 第5ターン、枢軸軍は最終攻撃を実施し、スターリングラードを完全制圧します。また、鉄道輸送と活性化移動を使って、長躯、グロズヌイに十分な兵力を送り込み、これを奪取します。
 ソ連軍は部隊はいるもののOPが蓄積できず、反攻に出られません。
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 第6ターン、このままでは枢軸軍が勝利してしまう。ソ連軍は限定的なOPを投入し、ドン河中流域で反撃に出ます。ルーマニア1個軍団を撃滅し、戦闘後前進と連続インパルスで敵の2個軍団を包囲します。ドイツ軍は、3個装甲師団をスターリングラード地区から引き抜くと、浸透移動でわずかに開いた間隙に突入。包囲下の2個軍団に連絡線をつなげ、この救出に成功します。
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 また、同じく第4装甲軍主力を、相当な兵力の集中が発生しているグロズヌイ戦線に派遣します。
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 最終第7ターン、先手を取ったドイツ軍はステップを浸透してきた敵部隊に8:1攻撃をかけ、これを撃破。グロズヌイ戦線の脅威を取り除きます。
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 もはや、なりふり構っていられないソ連軍は、別のドン河中流域で総攻撃をかけます。連続攻撃により枢軸同盟軍の2個軍団を撃破し、鉄道網を遮断して一時的にスターリングラードの連絡線を切断します(このままだと、枢軸軍はVPにならず)。
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 と、ここで、枢軸軍インパルスに。増援と南部からの再転進で連絡線を回復すると、そのまま、防御ラインを引き直してしまいます。兵力はいるもののOPを使い尽くしたソ連軍に、これを突破する力はなく、終了。
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 ロストフとスターリングラード、マイコプ、グロズヌイ、ヴォルガ河を制圧した枢軸軍の勝利となりました。
終了時
 正直、第1ターンにソ連軍の大部隊を取りこぼした時点で、ほぼ詰んだかという状況でしたが、結果的にスターリングラードに装甲部隊を集中し、防衛線を早期に突破。ヴォルガ河越しの渡河点を僥倖にも奪取できたことで、奇跡的な逆転勝利をもぎ取りました。渡河点奪取がなければ、あれほどの装甲部隊でもスターリングラード占領はできたかどうか。ともあれ、とても楽しいソロ演習でした。