今月のソロプレイ第7弾は、現代史アイテムから「パットン」(ツクダ)です。同名の戦車から取った戦闘級で、精密極まるタンクコンバットシリーズの一作です。WWⅡ以降の主力戦車や駆逐戦車、対戦車ミサイルまで登場します。ただ、現代陸戦戦闘級の本命だった「レオパルドⅡ」(ツクダ)に当時の最新MBTを組み込むため、「パットン」では、いわゆる第2世代までの戦車の収録となっています。
今回の朝鮮戦争シナリオは、洛東江の戦いから「大邱の夜戦」です。釜山橋頭堡の要である大邱を巡る最後の激戦を描くもので、朝鮮人民軍はT34/85が、国連軍にはM26パーシング(とdrによってはM46)が登場します。
このシナリオの特徴ですが、まず、登場戦車数がdrで決まります。国連軍は最大で8輛、最小で2輛(!)と、かなりの幅があります。平均は4.8輛なので、5台程度が使用できることになります。一方の朝鮮人民軍は、電撃戦の立役者T34/85が7-10輛登場します。平均は8台です。
機動力ではT34/85が若干、上ですが、主砲の能力は国連軍が圧倒的です。両軍とも高速徹甲弾(HVAP:High Velocity Armor Piercing)を使用できますが、国連軍のHVAPは5/6以上の確率で敵の装甲を貫通します。一方の朝鮮人民軍は、至近距離以外では敵を撃破できる確率は1/6強程度です。
もう一つの特徴は、タイトル通り、夜戦であること。両軍とも1d6して距離以下が出ると視認できます。つまり、300m以下でなければ、敵を発見できず、確率的には150-200mの砲撃戦が起こりやすくなっています。かなりの近距離戦といってもよいでしょう。
ただし、国連軍には各戦車に2発の照明弾が用意されており、平均で10へクス程度に発射でき、3-4へクス以内の敵をあぶり出します。敵のダミーを暴露するとともに、通常の夜戦距離(300m以下)に入る前に、国連軍が先制射撃を行えます。
よって、数で劣る国連軍の作戦は、装甲貫通力に±2が得られる丘に陣取り、迎撃をすることになります。敵が中距離(10へクス以内)に近づいた時点で、照明弾で部隊規模を明らかにします。夜戦交戦距離に入る直前に照明弾照射による先制射撃を実施し、あとは優秀な砲撃力を生かして、敵部隊の撃破を狙います。5台以上の主力戦車がいるならば、1-2輛は予備として拘置し、敵の主力を見極めて増援とします。
数では勝るものの、砲撃戦ではかなわない朝鮮人民軍は、ダミーを使用したブラフで左右両翼またはいずれかからの突破を狙うことになります。基本は行進間射撃になるので、命中率は非常に低いですが、数を生かした集中射撃で少ない敵戦車を撃破できれば、「負けない公算」が大きくなります。そう、朝鮮人民軍の勝利条件は、敵の全滅か、2/3以上の突破と、まず、達成不可能なので、3輛以上の突破による引き分けを狙います。
国連軍:M26×5
朝鮮人民軍:T34/85 ×9
国連軍は上記の作戦通り、見通しの悪い左翼に2輛、中央に1輛、右翼に1輛を配置します。最後の1輛は、中央の交差点に予備として拘置します。
一方の朝鮮人民軍は、左翼に4輛、右翼に5輛を配置します。本命は、両翼の実車輌とほぼ同数の配置をしたダミーです。今回は、先にダミーのスタックを突進させ、敵の照明弾の消耗を狙います。当然、残ったのが実車輌になりますが、うまく照明弾を使わせることができれば、夜戦距離前の捕捉を回避でき、近距離の砲撃戦で数少ない敵を撃破できる可能性が高まります。デメリットとしては、突破へのスケジュールがギリギリになりますが、敵の対応も遅れるはずなので、綿密に計算して盤外突破が間に合うようにします。
第1ターン、事前計画通り、朝鮮人民軍が動き出します。今のところ、左右どちらが主力かあるいはダミーかは不明のため、国連軍は偵察のために左翼の1輛を、西盤端に向かわせます。両軍ともじりじりと前進を続け、第1ターンが終了します。
第2ターンの第2フェイズ、国連軍の偵察隊が左翼盤端付近に到着します。闇夜の中、かすかに聞こえてくる機械音に耳を澄まし、照明弾を上げるタイミングを待ちます。
第5フェイズ、敵との距離が500mを切った時点で、照明弾を発射。しかし、これが不発となり(よりによって1!)、状況は不明のまま。
まもなく、通常の視認距離内に入る直前、第6フェイズ、もう一度、照明弾を発射します。これは成功となり、敵部隊の中央で炸裂し、周囲を明るく照らし出します。結果、6輛がダミーと判明。ちょうど、丘陵上を移動していた1輛のみが視認されます。
第3ターン、これで左翼は最大でも4輛ということがわかったので、国連軍は中央の予備1輛を右翼に向かわせます。
第2フェイズ、接近してくる敵に対し、国連軍の右翼の1輛が照明弾を発射します。これは成功したものの行動が低すぎて、周囲2へクスのみを照らします。それでも先頭の車両らしきものがダミーと判明します。
これで残りの車両がほぼ本物とわかったので、敵の接近を待って再度、照明弾を発射。これが効果的に打ち上がり、全ての敵車輌を照らし出します。最も前方のT34までの距離は400mだったので、国連軍のパーシング04号車がこの夜戦初の砲撃を実行します。が、惜しくも外れ。中央から増援の05号車は、敵を上方から狙い撃たんと、丘に繋がる斜面を登り始めます。
第6フェイズ、なおもT34は前進。国連軍の04号車は必死に次弾を装填します。一方、中央部はダミーの1輛が微妙な距離を保ちながら、前進をしてきます。この車輌が本物ならば、道路を使用する国連軍車輌の側面を撃てることになるので、正体判明のため、照明弾を打ち上げますが、これがまた、1で不発に。
第4ターンの第1フェイズ、国連軍は貴重な照明弾を再び、中央部に発射しますが、ああ、これもまた、1に!6発の照明弾を打ち上げて、3発が不発で、1発が低すぎて効果薄とは。史実通り、WWⅡの在庫で火薬が湿っていたのか?!
そうこうするうちに、右翼では敵戦車との距離が200m以内に。闇を通して響いてくるキャタピラ音に耳を澄ませますが、発見できたのはお互いに右中央の丘陵に登った1両ずつのみ。もとより、低命中率は覚悟の上で、一発でも多く撃って確率論的な命中に期待する朝鮮人民軍の08号車が、250mの距離で射撃を開始しますが、これは当然のごとくはずれに。
第3フェイズ、近距離に入った両軍は闇の中で必死に照準を合わせようとしますが、発見できたのは、丘上の国連軍05号車と先頭のT34の09号車のみ。敵を発見した朝鮮人民軍は、先頭以外の3輛の砲塔を旋回させると、一斉射撃します。行進間射撃のため、マイナス修整(-4)が強かったのですが、敵が側面を曝していたのが幸いし、1発が命中!これが車体に突き刺さり、高度による修整を無視して、撃破・炎上させます。
一方、国連軍は04号車が150mの近距離で09号車を射撃しますが、60%以上の命中率にも関わらず、失敗!ちなみに、国連軍は照明弾を上げていたのですが、なんと4回目の不発に。これにより、05号車が射撃できなかったのも、痛い。
第5フェイズ、今度は先頭をひた走ってきたT34の09号車が、国連軍の04号車に発砲します。これが車体下部に命中したものの、高度効果もあって装甲に弾かれます。間一髪!この危機に、国連軍は中央の01号車を発進させると、1輛しかいない右翼に向かわせます。
一方、左翼ではダミーのフリをしてきた4輛のT34が、国連軍の視界内に。十分に意識を集中していた戦車兵がこれを発見し、先頭のT34に発砲。上方からの射撃効果もあって、高性能のHVAP弾が易々と敵戦車の装甲を貫きます。燃料に引火したため、火災が発生します。
第6フェイズ、この火災で照らし出されたT34に対して、中央のM26が400mの距離で射撃を実行。これが、車体側面に吸い込まれ、撃破!2両目の撃破となります。
一方、右翼では集結をした4輛が、丘の上に向かって再び、突進を始めます。これに対し、04号車が100mの至近距離で三度目の射撃をしますが・・・まさかの外れ。ただでさえ、数の少ない国連軍が、射撃戦で優位に立てないとは、厳しい!04号車は乱戦を避けるため、一時的に後退します。
第5ターン、燃え上がる2輛の残骸に接近することは危険、と判断した朝鮮人民軍の左翼部隊は、闇夜に紛れるべく、一時的に後退します。これを逃がさじと、国連軍は照明弾を打ち上げて射撃を行いましたが、距離があったことと敵が急発進(急後退)をしたため、命中せず。国連軍は左翼の脅威は大幅に減少したと考え、中央の01号車に続き、もう1輛の03号車を旋回させ、右翼に向かわせます。
第3フェイズ、右翼の危機が高まります。丘を駆け上ったT34は、後退中の敵の追いつくと零距離からの行進間射撃を試みます。確率は50%を切っていましたが、1発を命中させます。車体側面に食い込んだ砲弾が装甲を食い破り、04号車を破壊してしまいます。04号車も同じく零距離射撃で、09号車についに命中弾を出し、装甲を貫通しましたが・・・まさかの損害なし(損害チェックで11!)左翼で旋回中の03号車も長距離射撃を行いましたが、こちらは外れ。結局、右翼は有利な射撃を悉く外し、敵に肉迫されて全滅します。
それでも、炎上した国連軍車輌が敵を照らし出したので、左翼から再び、中距離射撃を実施します。こちらは7以下で命中でしたが、外れに。
当初は直進のまま、突破を考えていた右翼の朝鮮人民軍ですが、距離はあっても国連軍の射撃は危険と判断し、後続の2輛は旋回して、一旦、丘から降りることに。
第6ターン、逃げる右翼の朝鮮人民軍を猛スピードで追いかけた01号車が、ついに丘に登って捕捉します。距離はわずかに200m。朝鮮人民軍は闇に紛れて逃げるか、数の優位で迎え撃つか、迷いましたが、近距離での砲撃戦なら分があると判断し、車体を旋回させて、迎撃態勢を取ります。すかさず、2輛で発砲するも、機動の影響を受けて外れとなります。
第3フェイズ、丘を登り切った01号車が、側面を曝しているT34の09号車を捕捉します。行進間射撃でしたが目標が大きかったため(側面の+2修整)、見事に命中!これを撃破します。右翼の丘陵にいるのは、ともに1輛ずつに。どちらが先に命中させるか、の一騎打ちに。
第4フェイズ、再装填を終えたT34の07号車が乾坤一擲の反撃を行いましたが、これが外れに。すると、第5フェイズ、今度は01号車が再装填をして発射。ともに行進間射撃の闇夜の150m射撃でしたが、見事に命中。必殺のHVAP弾が砲塔基部に突き刺さり、07号車を撃破します。小隊長の乗る01号車は、延べ3輛撃破です。
一方、右翼では迂回を終えたT34の2輛が、再び突破に向けて前進を開始します。視界ギリギリの300mで丘にいるM26を発見した2輛が発砲しますが、命中値は3以下のため、ともに外れとなります。
第6フェイズに、今度は02号車が接近する敵の発見に成功します。万全の停止状態から放たれた一発は、敵の1輛に命中し、これを撃破します。
終盤となった第7ターン、燃え上がる僚車の脇をすり抜けて、突破を狙ったT34の04号車でしたが、フル稼働のエンジン音を聞きつけた国連軍が発砲。こちらも狙い違わず、車体側面を貫通し、連続撃破となります。殊勲の02号車は、これで延べ3輛を撃破です。 朝鮮人民軍の車輌は、残り3輛に。丘の麓を迂回した右翼の2輛は突破確実ですが、撤退援護だったはずの中央の1輛が突破できるかが焦点に。
両軍とも、中央の南北に貫く道路を目指して、移動を開始します。いつ敵に遭遇するか緊張の中、時折、姿が見える敵に発砲し合うもの命中弾はなし。時間だけが過ぎていきます。
迎えた最終の第8ターン、接近するM26 の01号車とT34の08号車が150mの近距離に近づきますが、雲が月明かりを隠したため、発見できず。と、左翼の丘陵に陣取った03号車がエンジン音だけを頼りに、08号車に射撃を行います。いわゆる盲目撃ちでしたが、敵が側面を曝していたため、命中!上方からの高度効果も重なって、撃破。この瞬間、国連軍の勝利が確定しました。その後、T34の2輛が闇に紛れて南端から突破し、ゲームエンドに。
今回、照明弾の不発と国連軍のdrの偏りにより、接戦となりましたが、最後は国連軍が地力を発揮し、かろうじて勝利となりました。史実ではワンサイドゲームでしたが、闇夜、不確実な照明弾、ダミーといった要素がよい雰囲気を出していたと思います。