歴史・戦史研究「ちはら会」Drei

この会は、主にシミュレーションという手法を用いて、歴史・戦史を楽しもうという、有志の集まりです。興味ある時代をテーマに選び、図上演習(シミュレーションゲーム)を通して、文献研究では得られない「動きのある歴史」を見つめます。 「ちはら会」では、現在、会員を募集しています。年齢や資格等を問わず、興味のある方ならば、どなたでも参加できます。関心のある方は、下記にご連絡ください。 Eアドレス. chiharakai@apost.plala.or.jp (代表.mitsu)

古代史・世界史通史

 少しずつ春の気配が感じられる2月の半ばに、Tommyさんと自宅オフ会を行いました。この日の緒戦は、「ポエニ戦争」(Bonsai Games)です。前回のちはら会で、Tommyさんが連戦していまして、インストをしてもらっての対戦となりました。陣営は、カルタゴ軍(mitsu)対ローマ軍(Tommy)です。なお、「ポエニ戦争」(Bonsai Games)については、ゆいしかさんのブログに詳しいので、そちらをご覧ください。
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 まず、第1回目の戦争ですが、両軍とも史実通り、制海権を争う戦いになります。カルタゴ軍がシシリアを増強して、ここを完全支配すると、ローマ軍はイオニア海に渡って、そこからアフリカに上陸します。
 本国の危機に、カルタゴ軍は兵力を増強すると、ローマ軍に攻撃をかけます。ハミルカルが陣頭指揮を執りますが、ローマ軍も早くもスキピオを投入して対抗。全くのイーブンの戦闘の結果、辛くもカルタゴ軍が勝利します。
第1回戦争中盤
 が、不慣れだったため、カルタゴ市を空にしたところを、ティレニア海の制海権を取ったローマ軍が、電撃的にカルタゴを攻略!そのまま、時間切れでカルタゴの敗北となりました。
 次の戦争準備をして、第2回目の戦争へ。ヒスパニアを使用できるようになったカルタゴ軍は、史実通り、ハンニバルがアルプス越えでガリア・キサルピアへ。
第2回戦争開始
 ローマ軍はひたすら、戦力をため込みつつ、クンクタトル(ローマの盾ファビウス!)で時間を稼ぎます。業を煮やしたハンニバルは史実通り、イタリア半島を蹂躙しながら、タレントゥムへ。
 このままだと、VPが厳しいローマ軍は、得意の制海権を生かして、ヒスパニアに電撃侵攻しますが、カルタゴ軍の半数が引き返し、これを海に追い落とします。
 しばらくは、西地中海の覇権争いになりますが、ここにいたローマ軍がウティカに上陸し、そのまま、レプティスも落とします。それでも、イタリアとヒスパニアに盤踞するカルタゴ軍がVPで圧倒。あと、1ポイントまで行きましたが・・・。
ローマ軍、ウティカに上陸
 ここで、ローマ軍がカルタゴ市を強襲!守るのは、わずか1個軍団のみですが、これが落ちなければ、カルタゴが勝利できます。第1回目は、戦果なし。カードを使って、第2ラウンドに進みますが、これも戦果なし。3ラウンド目も、城壁は揺るがず。すでに、手札を使い切り、最後のRPで臨んだ第4ラウンド、ついにカルタゴ陥落。これで、本拠を落したローマ軍の勝利となりました。
カルタゴ市陥落
 結局、直接の野戦は、第1回目の戦争のハミルカル対スキピオのみで、ローマ軍は一度もハンニバルとは戦闘せず。カルタゴ直接強襲で、勝利しました。後から考えると、もう1戦力をカルタゴ市に置いておけば、とか、先に「元老院」あるいは「フィリッポス5世」を使っておけば、とか、ありましたが、緒戦としてはやむなしか。次はカードを読み込んで、プレイしたいと思います。

 続いて対戦したのが、moritaさん持ち込みの「ハドリアヌスの長城」(アークライト)です。その名の通り、ブリテン島に進出したローマ軍による防壁防御をテーマにしています。プレイヤーは、各地区のローマ軍指揮官となって防壁を作り、ピクト人の襲来を防ぎます。
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 よくある資源管理・発展ゲームですが・・・マトリックスが尋常でないくらい多い!防衛を受け持つ軍事シートが30×30cmで20弱(!)の要素があり。また、これを支える町の発展も、同じく30×30cmで20弱の要素。これがいろいろな部分で連結していて、1つの資源を消費して発展させると、次の資源が手に入り、これでさらに発展と、ローテーションが続く、続く!わずか6ターン(6年)ながら、初対戦だと2時間くらいかかります。ちなみに、インストだけで、1時間でした(笑い)。
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 普通なら、「テラフォーミング・マーズ」のようにトークンを使って、資源管理をするのですが、あまりにもマトリックスが多いので、この時代に紙とペンです。しかも予備の用紙が100枚以上あって、まるで電話帳です。
 手順としては、初期資源を使って任務を行い、そこで得た資源で次の発展をして、ハドリアヌスの長城を作ります。ターンの最後に、ピクト人の襲撃があり、これを防ぐとVPが獲得できます。が、実は、軍事以外の文化や街の発展の方が、VPが高かったりします。6年後に最も多いVPを得たプレイヤーが勝利します。よって、長城防衛を主題にしつつ、いかに他の要素を発展させるかが鍵です。
 ただし、この発展手順は99%がソロ。しかも要素が多いと来ているので、他人にかまっているゆとりはなし!究極の多人数ソロゲームといえます。
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 今回は、にし・mitsu・morita・strの4人で対戦でしたが、上記のように自分のことで手一杯なので、全然、記録が取れませんでした(AAR泣かせ!)。結果的には、
 にし:74点(文化を含め、満遍なく高発展)
 mitsu:67点(武勇と規律の軍事で突出)
 morita:60点(武勇と名誉で突出)
 str:53点(バランスよく、が突出はなく)
で、にしさんが勝利しました。直接、VPを上げられる街道を早々に整備したのが、効きました。
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 続いて、取り組んだのが、文明発展系のシンプルカードゲーム「世界の七不思議」(HJ)です。 
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 第1戦は、ハリカネソス(mitsu)・エペソス(エンジョウ)・ギザ(BIBI)・バビロン(kawa)でスタート。まずは、エペソス(エンジョウ)が軍事で突出し、それをハリカネソス(mitsu)が追いかけます。
 バビロン(kawa)は序盤から市民建造物づくりを繰り返し、ギザ(BIBI)は都市の発展で着実にVPを積み重ねます。
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 が、最後は第3エポックで、ハリカネソス(mitsu)が交易とギルドで高得点を得て、わずか2点差でエペソス(エンジョウ)を躱し、勝利しました。
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 第2戦の担当は、オリンピア(エンジョウ)・エペソス(kawa)・ギザ(mitsu)・バビロン(BIBI)です。緒戦と同様にオリンピア(エンジョウ)とギザ(mitsu)が軍事系でリードしますが、後半に一気に軍隊を増強したエペソス(kawa)が台頭します。
 エペソス(kawa)はやはり市民建造物づくりでVPを稼ぎ、ギザ(mitsu)とバビロン(BIBI)が続きます。
 が、勝負を決めたのは、文化系でした。3種類のセットを決めた上に、車輪の発明を4枚まで突き詰めたオリンピア(エンジョウ)がこれだけで28点を獲得し、ぶっちぎりの勝利でした。
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 第3戦の担当は、エペソス(mitsu)・バビロン(エンジョウ)・ギザ(kawa)・アレキサンドリア(BIBI)です。
  バビロン(エンジョウ)の軍国主義は相変わらずですが、エペソス(mitsu)も負けずについて行きます。
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   ギザ(kawa)も市民にアピールを繰り返し、15VPが取れる都市の発展にも傾注します。アレキサンドリア(BIBI)も市民建造物づくりの傍ら、交易系カードで得点を重ねます。
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 が、最後は、ギルドと文化系で突出したエペソス(mitsu)とバビロン(エンジョウ)のマッチレースとなり、ここも4点差でエペソス(mitsu)が勝利しました。
E3

 続いて、前回のちはら会でプレイした傑作カードゲーム「世界の七不思議」(HJ)を対戦しました。第一戦は、エフィソス(mitsu)・オリンピア(Tommy)・ロードス(BIBI)です。 
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 序盤、軍事力で勝るロードス(BIBI)が戦争を仕掛け、軍事VPを得ます。エフィソス(mitsu)は、後に備えて、資源開発に精を出します。オリンピア(Tommy)は、市民建造物を建築し、最後の世代に備えます。
第2世代
 後半、ロードス(BIBI)は、リソース不足から組み合わせが上手くいかず、文化の3種を集めるも伸び悩みます。オリンピア(Tommy)は、さらに建造物ラッシュを掛け、VPを積み重ねます。が、最後に物をいったのは、他のプレイヤーのカードでVPを得るギルド。タイミングよいカード廻りに助けられ、3枚のギルドを抑えたエフィソス(mitsu)が、他を振り切って70点台で勝利しました。
終了時
 コツを掴んだところで、第2戦に。陣営は、ハリカルナッソス(Tommy)・バビロン(mitsu)・ロードス(BIBI)です。
 第1世代、ロードス(BIBI)はやっぱり軍事を固めると、開発の可能性を広げる市場に向かいます。バビロン(mitsu)は自前の材料の確保に走り、ハリカルナッソス(Tommy)は早くも文化系を集め始めます。
第1世代
 第2世代、バビロン(mitsu)は軍事力最下位を嫌って、矢場を作り、ハリカルナッソス(Tommy)を軍事力で逆転します。が、これで開拓を圧迫され、あまりつながりのない市民建造物がやっと。この隙に、ハリカルナッソス(Tommy)は文化を開きまくります。
第2世代
 第3世代、バビロン(mitsu)はガツガツ、建造物を積み重ねますが、カード巡りに恵まれたハリカルナッソス(Tommy)は、のべで8枚(!)という文化系を集め、圧倒。軍事と資金のロードス(BIBI)と満遍なくVPを重ねたバビロン(mitsu)を抜き去り、ハリカルナッソス(Tommy)が36VPの文化得点で勝利しました。
第3世代
 ここまで来たら、もう一戦と、第3戦に。陣営は、アレクサンドリア(mitsu)・ハリカルナッソス(Tommy)・ロードス(BIBI)です。
 三度連続でロードスになったBIBIさん(確率0.29%!)は、これが私の生きる道と、軍拡に入ります。もとより、都市の発展で強力な軍事力が約束された隣人に張り合っても仕方がないので、ハリカルナッソス(Tommy)は交易で可能性を広げ、アレクサンドリア(mitsu)は市民建造物に走ります。
やっぱり、ロードスは軍拡
第1世代
 第2世代、これでもか!とハイスタックな軍事力のロードス(BIBI)に対し、アレクサンドリア(mitsu)は6枚の建造物で対抗。ハリカルナッソス(Tommy)は、市場を拡大するとともに、前回に味を占めた文化系を揃え始めます。
第2世代
 そして、最後の第3世代、3都市はギルドを分け合いながら、最後まで、軍事・建築・文化を突き詰めます。結果、軍事力はロードス(BIBI)が最大の18VPをゲットしたものの、7枚の建造物で36VPと15金を手に入れたアレクサンドリア(mitsu)が勝利となりました。
終了時
 う~む、軍事力は一見、目を引くけれど、民衆への市民サービスと積み重なった文化の方が上というあたりが、デザイナーの見識なんでしょうね~。ファミリー系としても高い評価を得た一端が、垣間見えました。

 この日の緒戦は、「世界の七不思議」(アークライト)の初版です。都市建築型カードゲームですが、非常にシンプルなシステムと適度なマトリックスで、2011年ドイツゲーム大賞エキスパート部門など数々の賞を受賞しています。詳しくは、こちらをご覧ください。
 陣営は、オリンピア(morita)・ロードス(バーネット)・アレクサンドリア(タナック)・エフェソス(mitsu)です。
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 序盤、アレクサンドリア(タナック)が軍事力で突出し、隣接するエフェソス(mitsu)がこれに続きます。第2エポックも激しい軍拡で、一時的にエフェソス(mitsu)がリードしますが、その分、資源の確保には後手を踏みます。
 ロードス(バーネット)は適切な資源管理で市民建造物を増やし、得点を積み重ねます。
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 迎えた最終の第3エポック、各都市は全ての七不思議を達成。となると、それぞれの積み重ねが勝敗を分けることに。
 エフェソス(mitsu)は、軍事と市民建造物でそこそこ稼ぐも、カードの巡り合わせも悪く、それ以上の有効な建築ができず。アレクサンドリア(タナック)は、軍事力と科学建造物で突出しますが、これもリソースが偏り、その他は稼げず。ロードス(バーネット)は、市民建造物と第3世代のギルドで上乗せし、かなりの得点となります。
 が、これを鼻の差で躱したのが、オリンピア(morita)でした。出遅れた軍事力を思い切りよく切り捨てると、資金の確保を優先し、同時にほぼ全ての分野に投資。結果、軍事-5となりながらも、豊富な資金と商業、市民建造物、ギルド、科学建造物で満遍なく得点し、合計47点で勝利しました。
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 これだけ多くの要素を詰め込みながら、30分程度で決着の付く出来の良さ。また、再戦したいものです。

 この日、最後の対戦が「古代兵棋」(堀場工房)です。古代将棋またはチェスを彷彿とさせるコンポーネントですが、マップにはSPQRの文字が。そう、ポエニ戦争の会戦を題材としたアブストラクト・ゲームなんです(この謳い文句にひかれて購入してしまいました、笑)。
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 マップは7×7マスで、歩兵9ユニット、騎兵4ユニット、指揮官1ユニットです。将棋、チェスとの決定的な違いは、ユニットは全て前進しかできないこと。歩兵と指揮官は前方の3マス、騎兵はそれに加えて前面の2マス目まで移動できます。
 戦闘は攻撃範囲の敵を移動により除去するのですが、歩兵は斜め前方(!)で、騎兵は前面の2マス目です。そう、正面からぶつかり合うと、膠着になってしまいます(移動・戦闘不能)。ただし、EXとすれば、お互いの膠着ユニットを除去できます。
 数は歩兵が圧倒的ですが、騎兵は2ヘクスの前進ができること、敵の歩兵からは膠着による相殺ができないこと(騎兵からの相殺、または敵騎兵による相殺はありえる)など優位性を持ちます。
 もう一つの大きな違いは、セットアップがブラインドであることです。これにより、両軍は作戦を考えて配置をします。開けてみて、その後の戦略を訂正または推進していくことになり、リプレイアビリティは高いです。
 勝利条件は、敵の指揮官を除去するか、敵盤端にユニットを進入させることです。
 ローマ軍(BIBI)対カルタゴ軍(mitsu)でスタートです。
 第一戦の初期配置は、ローマ軍(BIBI)が騎兵と歩兵を左右均等に配置したのに対し、カルタゴ軍(mitsu)は騎兵を右翼に偏重した攻撃態勢です。
セットアップ
  先手をとったカルタゴ軍(mitsu)は、右翼の騎兵を連携させながら突進します。ローマ軍も騎兵1ユニットを送って対抗しますが、カルタゴ軍はその脇をすり抜け、不用意に前進してきた敵歩兵を蹂躙します。
序盤
 ローマ軍は慌てて歩兵による斜傾陣を引くものの、騎兵の集中突進を止められず。カルタゴ軍が盤端への突破で電撃勝利となりました。
終盤
 第二戦のセットアップは、両軍とも右翼に騎兵を集中する配置です。
セットアップ
 前半、ローマ軍(BIBI)の騎兵が単独で突進してきます。カルタゴ軍(mitsu)は歩兵による斜傾陣を引いてこれを牽制すると、歩兵で攻勢に出て、騎兵との膠着に持ち込みます。そこへ中央から投入した歩兵が斜め側面から殺到したため、ローマ軍騎兵はやむなく歩兵との相殺を選ばざるを得ず。中盤までにローマ軍騎兵は全滅します。
騎兵の優位性で、相殺でも勝利に
 ここから、カルタゴ軍が満を持して右翼で攻勢に出ます。騎兵単独では同じ目に遭うので、歩兵と騎兵を組み合わせて、コンバインド・アームズを組み、前進します。敵は歩兵を複合させて阻止線を張りましたが、カルタゴ軍の歩兵による攻撃で相殺になればローマ軍に阻止する手はないということで、投了になりました。
中盤
 前進のみというルールとブランド配置により、毎回、展開が変わる面白さ!不利なセットアップでも、早めに対応できればリカバリーが可能という柔軟さ。さらに歴史的にも、騎兵をいかにうまく活用するか、あるいは阻止するかがポイントになるあたりや戦列を組んだ歩兵の堅陣さなど、アブストラクトながら、まさに古代戦の雰囲気をよく再現しています。「後に引けない」ことによるプレイ時間の縮減もあり、1プレイが30分以内という点も秀逸です。
 ちはら会が再開したら、持ち込みますので、みなさん、いかがでしょうか?

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