今月のソロプレイ第3弾は、「熱闘12球団ペナントレース」(HJ)の1986年日本シリーズです。パリーグ優勝の西武ライオンズ対セリーグ覇者の広島東洋カープの戦いです。
 西武ライオンズは、ゲーム化されている83年以降、91年まで実に7回のペナント優勝を誇る黄金期に当たります。16勝の渡辺(グレードA)と抑えも任せられる郭泰源(グレードA)、工藤・川本のグレードBに、東尾のグレードCと、3人が10勝以上の強力な先発陣です。抑えには、若手の石井(グレードA)と先発兼任の郭泰源(グレードA)がいます。打撃陣では、打って良し、走って良し、守って良しの石毛・辻の1・2番コンビニ、41本塁打の秋山、3割30本越えの驚異の新人清原、一発のあるブコビッチ、シェアな打撃の片平、トレードで中日から来たベテラン田尾、出塁率の高い金森、岡村など、こちらもどこからでも得点できる強力な布陣です。
 一方の広島東洋カープも、18勝を挙げたエース北別府(グレードA)を筆頭に、川口、金石、長冨、大野(グレードB)と、4人が10勝以上で、西武以上の強力な投手陣です。リリーフも炎のストッパー津田(グレードA)と新人ながら中継ぎの要となった川端(グレードB)と高い安定感を誇ります。打撃では、衣笠が.205の不調、山本浩二も30本に届かないHR数など、往年の主軸の衰えはあります。が、成長著しい正田、走って守って打てる髙橋、山崎、シェアなバッティングの長島、長内、代打の切り札小川、走りのスペシャリスト今井など、こちらも様々な得点パターンのあるチームです。
 第1戦は、セリーグのホームグランドの広島市民球場で、エース北別府(グレードA)と渡辺久信(A)の対決です。
 先制したのは、広島。2回裏、四球の山本浩二を置いて、6番小早川がツーベースを放ち、1アウト2・3塁とします。ここでベテラン衣笠が犠牲フライを打ち上げ、0対1とします。さらに4回裏、先頭の髙橋がヒットで出ると、すかさず、盗塁。ここで、5番長嶋がツーベースで2点目を挙げます。小早川三振の後、再び、衣笠。が、ここで、突然、激しい雨が振り出し、試合は中断。結局、そのまま、やむことなく、雨天中止となりました。
 翌日、中止規定に従って、再び、第1戦となります。が、この日も朝からどんよりとした雲に覆われ、時折、小雨が混じる天候。必死のグランド整備が功を奏し、試合開始となりましたが・・・1回表、ツーアウトで秋山を迎えたところで、前日を彷彿とさせてる激しい雨に。この日もノーゲームとなり、日本シリーズ史上初の2戦順延となります。
 やっと迎えた3日目、晴れ上がった広島市民球場で、第1戦が開催されます。先発は、川本と金石のグレードB対決です。
第1戦
 1回裏、好調広島打線が火を噴きます。1番正田がセンター前ヒット、山崎が内野安打で1・2塁に。髙橋が併殺打に倒れますが、ここで4番山本浩二がレフトへの特大ホームランを叩き込み、0対2と先制します。
山本
 西武は、4回表、こちらも4番清原がソロアーチで、1点差とします。
 その裏、広島はヒットの長嶋を置いて、6番小早川が右中間へのHRで、1対4と突き放します。さらに、5回裏、山崎がツーベースで出塁すると、山本がセンター間ヒットで繋ぎ、5番長嶋が犠牲フライを打ち上げて、5点目を捥ぎ取ります。7回裏には、四球とヒットで1・3塁とし、セカンドのエラーで6点として止めを刺します。
 西武も、9回表にAK砲の秋山がソロHRを放ちますが、そこまで。金石が完投し、2対6で広島が先勝します。
金石
 第2戦は、西武の2枚看板郭泰源(グレードA)と長冨(B)の投げ合いになります。初回、いきなり、西武打線が爆発します。核弾頭石毛が先制のソロHRを放つと、ヒットの辻を塁において、3番秋山が見事なツーラン!さらに、4番清原が連続HRのアベック砲で4点目を取り、長冨をノックアウトします。
秋山2
清原3
 広島も負けじと、1回裏、ヒットの正田を置いて、髙橋慶彦が郭の直球をバックスクリーンに叩き込み、4対2と追い上げます。
 その後、郭が持ち直し、広島も白武-小林のリレーで、4回までは得点なし。
 本来なら勝利投手が決まる5回、動きがでます。西武が1アウトから連打で、1・2塁とすると、中日から移ったばかりの田尾が貴重なスリーランを放ち、7対2とします。
 が、その裏、再び、正田が出塁すると、3番髙橋がこの2本目のホーランを放ち、7対4とします。さすが、カラスが鳴かない日があっても、慶彦のティー(バッティング)が聞こえない日はない、といわれた「練習の虫」!
高橋
 その後、2回は両投手陣の踏ん張りで、落ちつくかに思えましたが・・・8回表、西武はリリーフの大野を攻め、田尾のツーベース、四球、代打清家の内野安打で満塁とします。ここで、1番石毛がなんと満塁HR !まさにとどめの一発に。
石毛2
 西武は、疲れに見えた郭を、8回裏から石井(グレードA)にスイッチし、そのまま、終了。11対4で、対戦成績を1勝1敗の5分に戻します。
 第3戦は、舞台を西武ラインズ球場に移し、先発は北別府(グレードA)対渡辺久信(A)の対決になります。
第3戦
 両エースの投げ合いとあって、試合は真っ向からの投手戦に。
 広島の北別府は緩急を付けた投球で、西武打線に的を絞らせず、なんと、6回までノーヒット・ピッチング。7回裏に、清原にツーベースを打たれたものの、その後も要所要所を締め、9回まで点を与えず。
北別府2
 一方の渡辺も、好調広島打線を相手に、ヒットは許すものの、あと1本を与えず。スコアリング・ポジションに5回、ランナーを進めますが、きっちりと後続を抑えて、こちらも零封。結果、本シリーズ初の延長戦に突入します。
渡辺2
 勝負が動いたのが、第11回表でした。先頭の山本が四球で出ると、ピンチランナー今井が盗塁を決め、6回目のチャンスを迎えます。ここで5番長嶋が、渡辺の初球を叩いて、先制のツーランホームラン!ついに、均衡を破ります。
長島
 その裏、北別府は代打金森、石毛、辻を凡打に打ち取り、ゲームセット。延長11回を投げ抜く見事な完投で、2対0と広島が再び、リードします。
 第4戦の先発は、工藤と川口のグレードB対決です。序盤は、ともに小数点を取り合う展開になります。
 2回裏、西武は先頭の4番清原が、川口の速球を捉え、ライトスタンドに放り込みます。 
 続く、3回表、今度は広島が四球のランナーを進塁打で進め、山崎のタイムリーで同点にします。さらに、4回表、このシーズン絶好調の髙橋慶彦がソロホームランで、2対1と逆転します。
 その裏、西武も反撃に出ます。2番辻がセンター前ヒットで出ると、すかさず、盗塁を成功させます。ここから、秋山・清原の連続ヒットで2点を加え、2対3と逆転します。5回裏、ツーベースの伊東をおいて、打率4割近くの1番石毛がヒットで、2対4と差を広げます。
石毛
 8回表、広島も意地を見せ、代打小川のヒットと進塁打、またも髙橋のタイムリーで3対4と追いすがりましたが・・・。
 その裏、西武が変わった川端を攻め、ツーベースとヒットで加点し、3番秋山が止めの3ランホームランを放ちます。さらに、ツーベースの清原をおいて、代打西岡がタイムリーで4点目を加え、勝利を決定づけます。
秋山
 西武は、8回途中からリリーフエースの石井が広島打線を抑え、3対8で勝利し、再び、勝敗を2勝2敗の5分に。
 ともに王手のかかった第5戦、先発は、前回完投の金石(グレードB)とシーズン初登板の東尾(C)の投げ合いになります。
 この試合も5回までは、がっぷり四つの取り組みになります。2回に広島が投手金石(!)のツーベースで先制すれば、その裏に西武は、スリーベースの西岡を伊東がスクイズで返し、1対1の同点に。
 5回表、正田・山崎の連打で作ったチャンスに、頼りになる男-髙橋がタイムリーで再び、2対1とリードをしますが、その裏に西武の核弾頭石毛がソロHRで、たちまち、同点に。
 すると、7回裏、疲れの見えた金石から石毛がツーベースを放ち、辻のタイムリーで西武が逆転に成功します。さらに、8回裏、リリーフの川端を攻め、伊東がツーランHRを放ち、2対5に。ここで、西武は防御率.000の守護神石井を投入し、勝負あったかと思われましたが・・・。
 9回表、広島は先頭の達川と代打小川の連続ツーベースで、1点を返し、3対5とします。それでも、石井は2人を打ち取り、あと一人までこぎ着けます。ここで、バッターは3番髙橋。狙い澄ました1発は、同点となるツーランHR!土壇場に来て、5対5と広島が奇跡的に追いつきます。なんという展開!!
高橋
 9回裏は、炎のストッパー津田が締めて、ゲームセット。5戦目が終わって、2勝2敗1引き分けと、両軍とも一歩も譲らず。
津田
 再び、広島市民球場に移って、王手のかかった第6戦に。先発は、西武の両エースの郭泰源(グレードA)とシーズン初先発の大野(グレードB)です。
第6戦
 初回、広島は山崎の内野安打と盗塁でスコアリングポジションにランナーを進めると、5番長嶋のツーベースで、幸先良く、先制します。その後、郭は自慢の剛速球で広島打線をねじ伏せ、7回まで一人もランナーを出さない好投を続けます。
長島2
 西武は4回まで苦労人大野の緩急を付けたピッチングに、あと一本が出ず。が、勝利のかかった5回表、西岡・田尾の連打で1・3塁とすると、8番伊東がスクイズを決め、同点とします。さらに、1番石毛がタイムリーを放ち、2対1と逆転に成功します。その後も、西武らしく、6回と7回に犠飛で1点ずつを取り、4対1と突き放します。
 負けられない広島は、8回裏に先頭の達川がツーベースで出塁すると、2番山崎がタイムリーで4対2と詰め寄ります。
山崎
 迎えた最終回、山本浩二が四球を選び、長嶋が倒れた後、小早川が打席に入ります。ここで、カープの若武者が値千金の同点ツーラン!最終回の同点劇で4対4に!その後は、郭に変わった石井が後続を断ち切って、終了。日本シリーズ史上初となる二試合連続の引き分けです。
小早川
 再々度、優勝への大手をかけた第7戦、ここは再び、渡辺と北別府の最強エース対決(ともにグレードA)となります。
第7戦
 初回はともに零封でしたが、前半から西武打線が火を噴きます。2回表、ショートのエラーでランナーが出ると、ここまで打率が2割切っていた5番ブコビッチが、目覚めのツーラン!次の打席でもヒットを打つなど、覚醒します。
ブコビッチ
 4回表、四球の清原に、ブコビッチがヒットで続き、6番西岡がスクイズを決めて、加点します。ここで、レフト山本に痛いエラーが出て、2・3塁に。8番伏兵の伊東が、思い切って振り抜くと、バックスクリーンへのスリーランHRに!これで、6対1と広島を大きくリードします。
 その後、広島は清川のロングリリーフに、白武と繋いで、西武打線を抑えます。
 が、広島打線は立ち直った渡辺久信に翻弄され、点が取れず。最終回にツーアウト1・2塁とチャンスを作りましたが、代打小川が三振に倒れてゲームセット。
渡辺
 このシーズン初めて西武が先制し、対戦成績を3勝2敗として、優勝への大手をかけます。
 歴代日本シリーズ初の第8戦は、同じく広島市民球場で開催されます。先発は、工藤と川口のグレードB対決です。
第8戦
 初回、好調の西武が先制します。1アウト後、辻・秋山の連打で1・2塁とすると、目覚めたブコビッチが、値千金のスリーランHR!さらに、3回表、ヒットの清原、四球のブコビッチをおいて、6番西岡がタイムリーで、4対0とします。
 なんとしても、追いつきたい広島でしたが、工藤の変化球に翻弄され、4回までわずかヒット1本に抑えられます。5回裏、先頭の小早川が前々日に続く、ホームランで1点を返します。が、後続が打ち取られ、追加点を奪えず。
工藤
 この頃から、またもや雨雲が広島地方を覆い、小雨の中で試合が続行となります。広島は2番手に川端を投入し、3回を零封します。
川端2
 そして、迎えた8回裏、先頭達川を打ち取ったところで、猛烈な秋雨に。なんとしても、試合を再開したかった広島球団ですが、そのまま、日没まで雨が降り続け、4対1のまま、無念の雨天コールド!
 結果、4勝2敗で西武ライオンズが、86年の日本シリーズを制覇しました。  MVPは、2つの完投勝利で、延長を含むのべ20イニングスを投げ抜いた渡辺久信です。防御率も1.35と文句なしでした。敢闘賞は、打率3割3厘で、4本のホームランを放ち、9打点(両チーム最多)を挙げた髙橋慶彦でした。
渡辺2
高橋
 西武は、石毛が3本塁打の8打点、秋山が4本塁打の7打点、ブコビッチが2本塁打の5打点、伊東が2本塁打の6打点、と、広島を大きく上回る13本の本塁打、40打点が効きました。また、清原が.344、西岡が3.75と高い打率で、チャンスメイクをしました。投げては、MVPの渡辺と工藤が2勝ずつ、(1試合のみ打ち込まれましたが)抑えの石井が4試合を零封。平均防御率は、投手王国らしい3.15でした。
 広島は、正田と敢闘賞の髙橋が.303、達川が.304、小早川が3本塁打5打点など、活躍しましたが、ベテランの山本浩二が.179、衣笠が.083と低迷。結果、総本塁打9本に、24得点と振るわず。投げては先発の金石、北別府が防御率3点以下、リリーフでは白武と清川が0点と奮闘しましたが、1アウトも取れず降板した長冨、8.10と打ち込まれた川端等、投手陣が崩壊。平均防御率4.75で、被本塁打14本と打ち込まれました。唯一、西武を上回ったのが盗塁で、トータル7はよかったです。
  それにしても、2日間の雨天順延や最終戦のコールドなど、これほど天候に左右されたシリーズは、初めてでしょう(珍プレイ好プレイの綾)。