今月のソロプレイ第1弾は、中世史ジャンルから「三十年戦争-血戦ヴァレンシュタイン」(DC)です。傑作「太平記」を制作した中嶋氏デザインの30年戦争キャンペーンです。
 「戦うハプスブルク家」という単行本を読んで勝手に盛り上がっているのですが、三十年戦争は、日本ではなじみが薄く、ゲームとなったのも、この「三十年戦争-血戦ヴァレンシュタイン」(DC)と「神聖ローマ帝国」(T誌付録)、会戦級の「ブライテンフェイルトの戦い」(T誌付録)くらいです。  
 史実では、キリスト旧教(カソリック)と新教(プロテスタント)の宗教戦争でスタートします。カソリック信仰の厚い「神聖ローマ帝国」皇帝(ハプスブルク家世襲)が、新教連合を組んだプファルツ選帝侯を攻撃し、カソリックの覇権を確立しようとします。が、実際は「神聖ローマ帝国」とは名ばかりで、「神聖でも(皇帝に任命されないこともあり)、ローマでも(そもそもドイツ)、帝国でもない(部下の選帝侯に領土も分割してしまった)」状態で、皇帝という諱だけが残った空虚な権力。それなのに、ありもしない「世界帝国」の復活を目指すという、夢だけは大きく(ほぼ妄想レベル)。
 結果、軍事的勝利のために、信仰に関係なく、選帝侯や下級の諸侯である傭兵隊長に頼らざるを得ず。すると、さらに皇帝の影響力は低下し、諸侯が力を付け、選帝侯や有力諸侯による「群雄割拠」状態から、猛烈な内戦に突入。
 そこに影響力を行使したいデンマーク、スペイン、スウェーデン、フランス王家の外国が軍事介入し、ドイツを舞台とした壮絶な戦争が、三十年も続きます。軍事力の規模が数千人の会戦から数万から10万人近くまでエスカレートし、当然、それを養う補給などなく、全ての軍が徴収という名の掠奪に。ドイツ史上最悪と呼ばれた社会荒廃を引き起こした末、さすがに消耗し尽くした「皇帝」やドイツ諸侯、各国が、ウエストファリア条約で手打ち。敗北したハプスブルク家は事実上、神聖ローマ帝国も皇帝もなくなり、ドイツは元の群雄割拠状態に。諸外国も強力な軍隊を整備する必要性を痛感し、国王による絶対王政に突き進みます。
 知ってみると、結構、面白い。ですが、戦争の目的と内容が途中で二度、代わり(宗教戦争-ドイツ内戦-外国介入)、また、バイエルン公家とか、ハーデン伯とか、傭兵隊長ブラウンシュバイクとか、ランツクネヒト(傭兵)とか、なじみのなさの目白押しで、そりゃ、なかなか、デザインされませんね~。
T0
   このゲームでは、全土規模の内乱状況にうってつけの太平記システムを採用しています。陣営は、とりあえず、旧教側と新教側としていますが、信仰はあやふやで、旧教だが新教連合に付いたりと、軍事的に入り乱れるのは、上記の通りです。これに武将の軍事能力と身分、在地主義(出身地)が組み合わさって、あの複雑怪奇な「三十年戦争」をシンプルに描きます。
 また、他の太平記システムでは戦闘中の寝返りがつきもののですが、「三十年戦争」では外交フェイズという調略になっています(実際に、日本の関ヶ原のような、会戦中の裏切りはない)。面白いのは、この調略対象がドイツ諸侯と外国に分かれていて、非主導権側-主導権側でいずれかを選択します。drでランダムに選んだ諸侯か外国が、補充や自陣営への寝返りになるので、毎ターンの展開次第でどちらが自軍に有利になりそうか、知恵を絞ります。
 VPは、占領した領土と撃破した高身分の武将によって得られます。サドンデスはなく、最終ターンにより多くの蓄積VPを持つ側が勝利します。
 第1ターン、主導権は旧教連盟に2。が、いまだ、支配が確立していないため、ティリーがプファルツを攻め落とした以外は、まずは、支配を優先します。結果、旧教連盟はオーストリア、プファルツ、ネーデルランドの支配に成功します。新教同盟は、オランダとハンガリーのみで、VPは旧教連盟に4点となります。
T1
 第2ターン、主導権は新教同盟4に。まず、外交で先行する旧教連盟が、ブランデンブルク選帝候を味方に引き入れます。新教同盟はフランス参戦を勝ち取ります。
 が、動員が十分でないため、両陣営は局地戦に。数で勝る旧教連盟のスピノサがオランダに攻め入り、激戦の末、マウリッツを敗死させ、ここを占領します。また、「甲冑を着た聖職者」ティリーがベーメンに前進し、マンスフェルトを撃破します。マンスフェルトは、ハンガリーに逃げ込みます。
T2 局地戦
 結果、旧教連盟はチロル、バイエルン、オランダに拡張し、VPを12点に押し上げます。
T2
 第3ターン、主導権は旧教連盟3。新教同盟は待望のグスタフ王が参戦し、デンマークのクリスティアンⅣ世が地均ししたポンメルンに上陸します。後ろ盾を得たクリスティアンⅣ世はホルンとともに、ブランデンブルクに進行し、旧教連盟を打ち破ります。一方の旧教連盟は後顧の憂いを立つべく、ヴァレンシュタインとガラスがハンガリーに侵攻し、新教同盟軍を壊滅させます。
 要所を完全に押さえた旧教連盟は、VPを振り切りの20点とします。
T3 グスタフ王、登場
 第4ターン、主導権は新教同盟5。これにより、外交の先手を取った旧教連盟は、撃破したばかりのトランシルヴァニア公ベトレンを味方に引き入れます。 
T4 グスタフ参戦
 新教同盟は軍事力で勝負と、クリスティアン隊をザクセンに向け、新教徒ながら敵に付いた裏切り者の両ゲオルグを撃破しますが、この支配を獲れず。ならばと、主力のグスタフ軍が要衝プファルツに進行し、チロル伯及びバイエルン公を撃破します。
 が、数の不足から新教同盟の支配地域が思いのほか広がらず、旧教連盟は、VPの20点を維持します。
T4
 第5-6ターン、主導権は旧教連盟5。旧教連盟は、強敵グスタフを相手にせず、背後から部隊を浸透させ、支配の確保を維持します。200年ほど早いライヘンバッハ・プランです。ザクセンに迫るフェルディナントⅡ世率いる皇帝直属軍こそ、撃退されたものの、後方を駆け抜けた傭兵隊長ヴァレンシュタインが、ヴェストファレンの新教同盟支配を切り崩します。また、ブランデンブルク選帝候も、敵を避け地元に舞い戻り、この支配を取り返します。頼みのグスタフは、正面の敵に備えてプファルツから動けず。
T6 旧教連合の後方攪乱
T6
 第7ターン、主導権は新教同盟4。新教同盟は外交で転機を作ろうとしますが、帝国諸侯は振り向かず。やむなく、軍事力で解決すべく、グスタフがロートリンゲンに進行します。これに、フランスが加勢し、この支配を取ります。が、ザクセンは、フェルディナントⅡ世亡き後、皇帝を引き継いだⅢ世の皇帝直属軍の猛攻を受け、陥落します。
T7 強力な軍が数が足りず
 第8ターン、主導権は新教同盟5。皇帝直属軍は戦捷の勢いを駆って、プファルツに進行します。味方が増えない新教同盟にとって、頼りになるのは、無敗を誇るグスタフ軍のみ。ロートリンゲンからとって返したグスタフ軍とフェルディナントⅢ世直属軍とで、三十年戦争最大の激戦が発生します。フェルディナントⅢ世が数の力で、スウェーデン・デンマーク連合軍に4ヒットを与えます。が、新教同盟軍の戦果は、なんと15ヒット!3部隊が集結していたために、旧教連盟軍は撤退が遅れ、全滅!運命表で討ち死がなかっただけが、救いか。
T8 グスタフが勝ち続けるも・・・
 が、この背後で、ヴァレンシュタインがホルン将軍を敗走させ、また、ブランデンブルク選帝候とザクセン選帝候がポンメルンを占領したため、VPは旧教の圧倒的有利で動かず。
T8
 第9ターン、主導権は新教同盟4。空前の大勝利も戦略的有利を覆せないグスタフ王は、ヴァレンシュタインの首を求めて、ヴェストファレンへ。が、稀代の傭兵隊長は、これを軽戦で躱し、決定打を打たせず。その隙に旧教連盟がロートリンゲンを奪還し、ホルシュタインを占拠します。
T9 グスタフを東奔西走さす
 第10ターン、最後の主導権は旧教連盟5。新教同盟はそれでも諦めず、グスタフ王がヴァレンシュタインを追撃しますが、あと一歩で取り逃がし。逆に、プファルツを皇帝直属軍に奪還され、乾坤一擲のネーデルランド会戦もレオポルドに敗北し、万事休す。最後まで、VPは20点の振りきりで、旧教連盟の大勝となりました。
T10 最後まで数を破れず
T10
 なお、本プレイで、中世・近世史ジャンルのプレイ率が4割を超えました。詳しくは、こちらをご覧ください。