今月のソロプレイ第三弾は、「中央軍集団東へ」(GJ)です。商業誌となったGJ誌の第7号付録となった作品で、バロバロッサ作戦初期の中央軍集団の戦いを描きます。先達には「独ソ電撃戦」(エポック/CMJ)がありますが、このアイテムはスモレンスクまでを含んでおり、作者曰く「独ソ電撃戦+PGG」となるそうです。
 今や、スタンダードになったチットドリブンを使用し、両軍の差を描きます。ドイツ軍は1ターンに4回の移動または戦闘を実施でき(うち、機械化移動または戦闘が1回)、かなりの柔軟性を持ちます。対するソ連軍は、軍ごとのチットで移動-戦闘で、史実でもそうだった連携不足が、基本システムで表現されています。
 それ以上に強烈なのが、ソ連軍のドクトリンです。史実での不器用さを表すために、初期のソ連軍は、数多くの制限が付いています。作戦の強要(指揮チェック表でランダムに決定)、スタック、共同攻撃、後退の禁止、複数軍の隣接禁止、移動後攻撃の制限、ZOC離脱のペナルティ(移動力1/2)と、いわゆる陰謀ルールでがんじがらめになっています。
 よって、序盤の展開としては、高い柔軟性で突破-包囲を繰り替えすドイツ軍に対し、無謀な反撃で自滅していくソ連軍が、見事に再現されます。
 面白いのは、このドクトリンがターンを追うごとに(ランダムチットで)解除されていく点です。何が来るかは、神のみぞ知るですが、あれほど無様だった赤軍が、中盤にかけて拠点防御ができるようになり、終盤には数を生かした反撃が可能になります。
 ソ連軍には増援を引かないことで、任意の戦術チットを選択できるルールもあり、増援が先か、ドクトリンが先か、いい意味で悩むことになります。ソ連軍の増援は12個軍も有り、3-5個歩兵師団の貧弱な軍から、戦車・機械化師団6個を含む22個師団の増援まで、これまたランダムで登場し、ゲーム展開を極めて多彩にしています。
 オリジナルではゲームバランス的にソ連軍がかなり有利だったとのことで、その後、バランス調整ルールが発表されました。今回は、そのうちのドクトリンの選択制限のみ、使用しています。
 第1ターン、ゲームはドイツ軍の奇襲セグメントから開始となります。都市以外ではスタックできないソ連軍に、戦闘比とその後の展開を考えて、効率のよい攻撃を仕掛けます。攻撃側に損害の出ない8:1+1以上の攻撃を4カ所、「1」以外なら撃破となる7:1を2カ所、それ以下を3カ所、行います。結果、最も比率の低かった5:1でD1となった以外は、全て敵の撃破に成功します。
T1 奇襲フェイズ
 その後、通常のシークエンスに戻りますが、ドイツ軍行動が続き、機械化戦闘を含め、三度の攻撃を仕掛けます。Brest-Litovsk要塞への3:1のみ失敗(C)したものの、それ以外ではEXを含め、何らかの損害を与え、のべで15個師団を撃破します。
T1  ①AGC戦闘
 ソ連軍チットも引かれましたが、指揮チェック修整-1により、第3軍と第10軍が無謀な反撃を強要されます。結果、さらに5個師団が壊滅し、1個師団がステップロスとなります。
T1 ⑧3A自殺攻撃
 第1ターンが終わった時点で、ソ連軍前線はわずか5個師団を残すのみとなります。
T1終了時
 第2ターン、ソ連軍のドクトリンチットで「スタック」が来ますが、先の制限に従って引き直しとなり「戦略移動」に。
 行動チットはまたもドイツ軍が先制し、効率的な移動と連続攻撃により、ソ連軍の残存部隊と都市守備隊へ攻撃の矛先を向けます。第1戦闘こそ、やや接敵が少なく、低比率戦闘で若干の損害が出ましたが、連続攻撃により、3手番目までにBialystokとGrodnoを占領し、Brest-Litovsk要塞にも2ヒットを与えます。
T2 ③AGC連続戦闘
 ソ連軍は、小規模増援の第30軍をスモレンスクへ東進させた以外は、防御に徹します。
T2終了時
 第2ターン終了時には、ドイツ軍は快速の第2装甲集団でBaronovichiを包囲し、第3装甲集団はやや遅れて、ミンスクへ。
 第3ターン、またもソ連軍の増援は小規模の第28軍で、ドクトリンチットも指揮チェック修整+1と低迷します。
 速度は力とばかりに、ドイツ軍は一旦は包囲したBaronovichiを後にし、行動の全てで移動を選択します。特別ルールによりこのターンまで補給切れがないことから、第3ターンが終わった時点でMinskを装甲集団が、Baronovichiを歩兵部隊が包囲し、次ターン攻略の準備を終えます。
T3
 第4ターン、前ターンと一転し、ドイツ軍は満を持して連続攻撃をかけます。攻撃ユニット数が6を越えたため、2回のdrが可能となり、BaronovichiとMinskが陥落。Brest-Litovsk要塞も後1ステップを残すのみになります。
T4 ⑥AGC 都市攻略
 効率のよい攻撃で、補給路を確保したドイツ軍は、快速の装甲部隊を突進させ、ベレジナ川を守備していた1個機械化師団を包囲し、渡河に成功します。
T4 ⑧AGCベレジナ川渡河
 ソ連軍は、第13軍の一部撤収に成功し、Vitebsk-Orsha-Mogilevの拠点にスタック配置できたものの、増援は全て小規模軍のみで、Smolnesk-Roslavlの守備は極めて脆弱なままです。
T4終了時
 第5ターン、装甲部隊と後続の歩兵部隊の間に大きな間隙ができたため、ドイツ軍は移動を優先して、前線への送り込みを急ぎます。装甲集団は快速と独自行動を生かして、早くもOrshaに取り付き、ここを機械化戦闘で奪取します。そのまま、唯一の中央戦線である第30軍を捕捉し、Smolneskへの道をこじ開けます。一方、南北端のVilnaとSlutskには歩兵の別働隊が追いつき、攻略に着手します。また、粘りに粘った後方のBrest-Litovsk要塞がついに陥落します。
T5 ⑥オルシャ陥落
 ソ連軍は、撃破された第30軍の代わりに、わずか3個師団の第20軍で、急遽、Orsha-Smolneskの中間に戦線を張ります。その背後には、第16軍の大量11個師団が展開するものの、「スタック」ドクトリンがないため、はなはだ心許ない状況です。
T5終了時
 第6ターン、ソ連軍の増援は大規模の第24軍となりますが、いまだ、「スタック」ドクトリンは来ず。
 ドイツ軍は移動-戦闘のオーソドックスな手順で兵力を集中し、Slutskを歩兵で攻め落とします。主力の装甲集団は第20軍を鎧袖一触で吹き飛ばし、そのまま、突進。先駆隊は戦線を張りながら、Smolneskまで2へクスに迫ります。
T6 ③AGC攻撃
 第7ターン、ソ連軍は背に腹は換えられず、増援を諦めて、待望の「スタック」チットを任意選択します。
 こうなると、さすがのドイツ装甲集団も単独でのSmolnesk攻略は荷が重いため、一旦、進撃を停止します。移動行動を優先させ、歩兵を追従させて、補給路の確保と周辺都市の攻略に振り向けます。これにより、北のVilnaと南のBobruyskが陥落。ドニエプル川沿いに補給路の遮断に来た敵歩兵師団を迂回包囲し、兵力の終結を待ちます。
T7 ⑦AGC攻撃
T7終了時
 第8ターン、ソ連軍はまたも任意選択で「スタック」チットを獲得し、3スタックによる防御を展開できるようにします。
 前線への兵力が集結し始めたところで、ドイツ軍は攻勢を再開します。防備の厚いSmolnesk正面攻撃を避け、北寄りの歩兵師団スタックに装甲2個スタックをぶつけ、7:1で2drの猛攻でこれを撃破します。同時に、補給路を遮断する歩兵師団を高速機動で包囲し、1個スタックを撃滅します。
 南方では2個戦車師団が籠もるMogilevを、比率は低いものの歩兵による飽和攻撃(1:1の2dr)で攻撃し、1個師団を撃破。さらに南の渡河点で、第28軍の1個師団を撃破し、渡河に成功します。
T8 ④AGC攻撃
 ドクトリンチットの任意選択で増援が来ないソ連軍は、やむなく戦線をさげます。
T8終了時
 大きな転機が、第9ターンに起こりました。Smolnesk側面を攻撃していたドイツ軍は、敵の除去により、一時的に突破口を開くことに成功します。そこから、第14自動車師団がSmolnesk-Roslavl間にするりと抜け出します。運悪く行動チットを使い果たしていたソ連軍は、これに対応できず。機械化移動を含む2度の移動が連続して決まり、なんと南部の突破へクスへ突入してしまいます。これにより、ソ連軍の南部への兵力展開が著しく困難になります。
T9 ⑧AGC 14自動車化師団が突破 
 同時に兵力の充実により、Smolnesk正面攻撃を再開し、多くの敵部隊の除去に成功します。
T9終了時
 この危機にソ連軍は次々と大量増援を送り込んで、Smolneskの防衛を試みます。第10ターンに第19軍を、第11ターンに第21軍と、各10個師団を越える部隊でハイスタックを作り、Smolnesk全面に投入し続けます。さすがに3枚スタックとなると、ドイツ軍もこれまでのような高比率の攻撃はできなくなりますが、それでも高火力の装甲スタックで力押しにじりじりと前進を続けます。
T11 ②AGC 絶え間なき攻撃
 そして、本当の危機は南部で・・・。突破により、この方面へ直接増援を送れないソ連軍に対し、ドイツ軍は1個装甲軍団強の快速部隊と歩兵師団群を投入し、各個撃破に移ります。決して十分とは言えない兵力でしたが、ドイツ軍の作戦の柔軟性が勝り、そこここでの小包囲とRoslavlの占領に成功します。
T12 ⑪AGC 比率は上がらずも攻撃
 それでもあきらめないソ連軍は、次々と現れる増援にドニエプル川を強行渡河させ、一時的に数の優位でRoslavlの間接包囲に成功します。
 Smolnesk正面での猛烈な消耗戦とRoslavl周辺の補給路を巡る壮絶な戦闘が繰り広げられましたが・・・最後に笑ったのは、打撃力と高火力に勝るドイツ軍でした。
T12終了時
 最終の第13ターンに、2度に及ぶ大規模攻撃で、ついにSmolneskが陥落します。そして、南部での逆襲により、Roslavlの安全を確保し、突破へクスまでの補給路の開削に成功しました。
T13 ③AGCの攻撃
終了時
 ここで、ゲームエンド。VP計算をしたところ・・・
 13都市の占領…+13VP
 南部への突破…+2VP
合計15VPとなり、ドイツ軍の勝利となりました。
 いやー、面白かった。知人の印象ではソ連軍圧勝と聞いていましたが、追加選択ルール「ドクトリンの制限」を入れるだけで、極めて白熱した戦いになりました。第9ターンの極端なチット廻りで突破ができ、結果的にはドイツ軍の圧勝でしたが、あれがなければ、おそらくRoslavlの確保(補給線の維持)は厳しかったと思います。となると、あとはドイツ軍の損害によっては、逆転もありえたかと(ドイツ軍は2個歩兵師団が壊滅しており、あと1個の壊滅で-1VPでした)。
 14年前のGJ誌で絶版になって久しいですが、3時間程度で終わるバルバロッサ緒戦の作戦級として、十分に評価できると思います。もし、対戦希望がありましたら、早めに言っていただければ、ちはら会で受けますよ~。