今月のソロプレイ第6弾は、「熱闘12球団ペナントレース」(HJ)の1989年日本シリーズです。前年の最終戦敗北の雪辱を果たした近鉄バッファローズ対圧倒的な投手力を誇る読売ジャイアンツの戦いです。史実では、不利な下馬評を覆し、近鉄バッファローズが3連勝するも、加藤哲郎の「ロッテより弱い」発言(実際は言っていない)に奮起したジャイアンツナインが、4連勝で逆転勝利を収めます。
近鉄バッファローズは、19勝のエース阿波野(グレードA)に、12勝の小野和義(グレードB)、山崎、加藤哲郎がグレードC、抑えの吉井がグレードBです。が、それ以外の先発は、グレードEのみで、よくぞ、これで優勝できたなぁというのが実感です。打撃陣では、リードオフマンの大石、成長著しい村上、3割超えの新井、一発のある鈴木貴久に、リベラ、本塁打王のブライアントと、破壊力は抜群です。
読売ジャイアンツは、最多の20勝投手斎藤(グレードA&C)に、12勝の槇原(グレードA)、桑田、宮本、香田、抑えの広田がBと最強に近い投手陣です。打率.378の首位打者クロマティに、3割越えの駒田、一発のある原、シェアなバッティングの篠塚、岡崎、名手川井など、多彩な顔ぶれです。監督は、こちらも選手遣いの極めて上手い藤田元司です。
第1戦は、パリーグのホームグランドの藤井寺球場で、エース斎藤(グレードA&C)と阿波野(A)の対決です。この日は、息詰まる投手戦となります。 近鉄先発の阿波野は、ランナーを出すものの、要所では力でねじ伏せ、また、2つの併殺に打ち取るなど、5回までホームを踏ませず。一方の斎藤も、3回までノーヒットピッチングで、その後にランナーを出しても後続を断ち切ります。
ゲームが動いたのは、5回でした。先頭の篠塚がヒットで出ると、4番原がバックスクリーンに先制のツーランHR!これぞ、4番の働きで、2対0とします。が、その後も阿波野は粘り強い投球を見せ、最終回まで投げ抜きます。
巨人の斎藤も、隙を見せず。6回に先頭の新井にツーベースを打たれるも、ショートの好プレイでダブルプレイで凌ぎ、最終回もホームランで同点の場面を冷静に投げ抜き、シーズンそのままの勢いで、完封。読売巨人が緒戦をものにしました。

この日も立ち上がりは、両投手とも順調で、2回までヒットを許さず。思わぬ流れが起こったのは、3回表でした。ツーアウトから9番緒方がツーベースを放つと、ああ、ライト鈴木が痛恨のエラーで先制点を与えます。動揺した小野から、2番篠塚が狙い澄ました一発を、右中間スタンドに叩き込み、3対0とします。
5回裏、近鉄は若き村上がソロHRを打って、のろしを上げますが、2つの四球と内野安打で満塁とするも、桑田に押さえ込まれ、1点のみ。

桑田に翻弄された近鉄は、8回に反撃に出ます。リベラ、鈴木のヒット、四球で満塁として、HRを放っている村上。が、ここは併殺打に打ち取られ、1点のみ。が、続く、真喜志が執念のツーベースを放って、6対3とします。
ここで、巨人は桑田を諦めて、リリーフに槇原(グレードA)を投入します。槇原は期待通り、ヒットを許さず、9回も投げ抜いてセーブ。巨人が強力な投手陣で、6対3と2勝目を上げます。
第3戦は、舞台を東京ドームに移し、先発は山崎(グレードC)対宮本(B)です。この試合は、初めて近鉄が先制します。2回表、真喜志のヒット、山下の四球で1アウト1・2塁とすると、1番新井がタイムリーで、1対0とします。
さらに、3回表、ランナーを一人おいて、6番村上がツーランHRで、3対0に。
6回、近鉄はまたもランナーをおいて、村上がタイムリー・ツーベースで4対1に。が、巨人も負けじと、4番原がタイムリー・ツーベースで、4対2と追いかけます。
近鉄の先発山崎は、7回まで投げ抜き、8回からは抑えの吉井(グレードB)にスイッチします。吉井は2回を締め、ゲームセット。近鉄がこのシリーズ初の勝利を挙げます。
一方の巨人の先発香田は、こちらもヒットを打たれますが、連打を許さず、4回まで無失点で切り抜けます。
が、5回表、粘り腰の近鉄はヒットの鈴木をおいて、山下がタイムリー・ツーベースで、1対1の同点に追いつきます。
息詰まる均衡は、6回裏に崩れます。1アウトから5番井上がヒットで出て、すかさず、盗塁。ここで、岡崎がタイムリー・ツーベースを放ち、1対2と逆転に成功します。
香田はこれに力を得て、8回まで点を与えず。9回は、ストッパーの広田が登場し、代打淡口にヒットを許すも、後続を断ち切って、ゲームセット。1点差をものにした巨人が3勝目を挙げ、シリーズ優勝に王手をかけます。
斎藤は球威のある投球で近鉄打線を押しまくり、3回までノーヒットに。が、5回表、近鉄は不振から6番に降格した鈴木貴がツーベースで出ると、送りバントで3塁に。ここで、8番山下がセンターに犠牲フライを打ち上げ、貴重な1点を取って、同点とします。
前日以上に息詰まる攻防でしたが、7回表、真喜志、山下の連打で数少ないチャンスを作ると、1番新井がタイムリーで2対1と逆転を果たします。
先頭のクロマティが、この日2本目のヒットで出ると、4番原が繋いで1・2塁とします。ここで、チャンスに強い5番駒田がきっちりとタイムリーを放ち、巨人は土壇場で2対2の同点に追いつきます。何という展開!阿波野は後続を断ち切って、初の延長戦に。
巨人は、9回から槇原(グレードA)を投入し、ランナーは出すものの、後続を断って、12回までを投げ抜きます。13回からは、水野(グレードC)が引き継ぎ、こちらは単打のみの安定した投球で、延長17回まで点を与えません。
一方、巨人は投げ続ける阿波野を攻め、2度のサヨナラのチャンスを作ります。が、阿波野は前年の最終戦敗退の悔しさをぶつけ、全力で腕を振り、最後の1本を許さず。途中で雨天中断があって、冷えた身体でパフォーマンスが落ちても(グレードCに低下)、鬼気迫る投球で、巨人打線を抑え続けます。なんという、気迫!!
が、さすがに、延長13回を過ぎたところで、下位打線に連打を浴び、ここで守護神吉井にスチッチします。吉井は川相を打ち取って、点を与えず。延長16回裏に、呂明賜と好調駒田に連打を浴びるも、阿波野の気迫が移ったかのように、後続を断ち切ります。
そして迎えた延長18回、これで決着がつかなければ、引き分けになります。近鉄は、この日3本のヒットを放っている6番鈴木貴が、打席に入ります。スタミナ抜群の水野も6イニングス目に入り、制球が甘くなったところを見逃しませんでした。やや中央よりに入った外角のストレートを、ライトスタンドへ!ついに、均衡が破れる!
それでも、水野は後続を打ち取って、延長最終回の奇跡を待ちます。第18回裏、5イングス目に突入した吉井は、クロマティ、呂、駒田を撫で切りにし、ゲームセット。日本シリーズ最長の延長18回の攻防に、幕を下ろしました。これぞ、プロ野球!これぞ、日本シリーズ!
近鉄は驚異の粘りで、2勝目を挙げ、舞台を再び、藤井寺球場に移します。第6戦の先発は、桑田と小野のグレードB対決です。
序盤から両投手とも、気合い十分の投球で点を与えません。初回、巨人先頭の緒方がツーベースを放ち、川相の進塁打で1アウト3塁としますが、クロマティ、原を小野が打ち取り。その後は、四球は出すものの、1本もヒットを写さず、7回まで零封します。
一方の桑田も初回に大石のヒットと盗塁でスコアリングポジションにランナーを進めるも、後続を打ち取り。こちらも、7回まで点を与えぬ零行進が続きます。
そして、その裏、ドラマが待っていました。ここまで、打率.174、本塁打0にあえいでいたパの本塁打王ブライアントが、ついに特大のソロアーチ!まさに1点を争うこの試合で出るか!!
勝っても負けても優勝の決まる最終第7戦、巨人はここまでリリーフのみで温存していた槇原(グレードA)を投入します。近鉄の先発は中4日の山崎(グレードC)です。
が、巨人も直後の3回表、ツーアウトから山崎を攻め、1番緒方から4番駒田までの連続安打で、2対1と逆転します。


5回表、またも先頭の緒方がヒットで出ると、井上、クロマティ、原、駒田が容赦ない5連続ヒット。一気に、4点を取って、山崎をノックアウトします。
代わった佐藤(グレードC)は、この回は抑えたものの、6回に巨人打線に捕まります。3つの四死球とバントヒットで1点を取ると、6番の職人篠塚が2点タイムリー。さらに8回には、駒田がタイムリー・ツーベースでダメ押しの10点目を挙げます。
5回以降、槇原は本来のピッチングを取り戻し、8回裏に1・2塁のピンチを招くも、4番鈴木を打ち取り。最終回もリベラに四球を与えただけで、近鉄の代打攻勢を抑えきり、ゲームセット。10対2で巨人が圧勝し、日本シリーズ優勝を決めました。
巨人は、思いのほか、近鉄投手陣に苦労しましたが、最終戦では本来の打線が爆発し、優勝に繋がりました。後半に活躍した緒方が.435、クロマティが.367、MVPの原が346、井上が.318と打ちまくり。打率は.250前後でしたが、駒田と篠塚が4打点と勝負強さを発揮。チームとしては、本塁打数はわずかに4本ながら、平均打率.251、23打点で、近鉄を圧倒。投げては、斎藤、香田、槇原が防御率1点台で、5試合で2失点以下と手堅い投球で、平均防御率は1.77で、近鉄に競り勝ちました。
近鉄は、当初は貧弱と思われていた投手陣が、6戦目までは、巨人を上回る防御率1.60点と大健闘。特にエース阿波野は、鬼気迫る投球で、緒戦と第5戦の延長戦の22イニングスを投げ抜きました。他にも小野が防御率1.5点、吉井が0点と接戦の立役者となりました。が、打線は3割を超えたのは、.344の新井ただ一人で、大石、リベラ、真喜志、山下が1割台と低迷。打点も村上の4点が最多。本塁打王ブライアントは、最終盤に3打席連続アーチを放ちましたが、全てソロで時すでに遅く。それでも、粘り強い戦い方で、最終戦まで持ち込みんだのは、まさに執念でしょう。