最近、ソロアイテムが流行のようで、対戦ゲームの牙城だったはずのGJ誌やCMJ誌でもソロ専用が付録になるくらい。というわけで、先発の「箱館戦争ソリティア」(Bonsai Games)を(当然、ソロで)プレイしてみました。
このアイテムは、上記に先んじて販売されたミニゲーム風なんですが、実はヘビー級アイテムといってよい本格派です。プレイヤーが旧幕府軍を担当し、蝦夷共和国建国を目指すのは、先行作品と同じです。が、ゲーム開始を、新政府軍の反撃ではなく、旧幕府軍の松前藩平定にしたことで、ヴァリエーションが増え。さらに新政府軍の行動(一部、旧幕府軍の行動や戦力)をチットドリブンにし、作戦的な流動性と後半の怒濤の新政府軍の攻勢を、再現しています。
このチットが24枚あり、新政府軍の総攻撃、主攻、助攻、艦隊移動(と海戦)に、悪天候や列強の注目などのイベント、旧幕府軍の人材や防御施設など、専用サマリーがついているくらい。事件も、海賊船嫌疑やガルトネル開墾条約、住民との摩擦、遊軍隊の暗躍、艦砲射撃など、11種類の多彩な内容が起こりえます。
戦闘は通常の陸戦の他に、海戦、襲撃(青森強襲や宮古湾海戦)ができ、その分、ルールが詳細に。この中では、陸戦が最も簡単な部類です。
システム自体は、旧幕府軍-新政府軍の順に、行動しなくなるまで交互に実行していくシンプルものですが、それをチットや事件の豊富なヴァリエーションで補っており、ある意味、箱館戦争絵巻のラスボス感さえ、あります。
展開は、第3ターンまでに旧幕府軍が松前藩を追い落とし、状況によっては青森・宮古湾に襲撃をかけます。第4ターンには新政府軍艦隊が行動をはじめ、制海権を取った箇所に上陸を行います。第5ターン以降は、新政府軍が12枚を超える圧倒的な枚数の行動チットで、大攻勢をかけ、旧幕府軍は遅かれ早かれ五稜郭の戦いに。旧幕府軍はなんとか、この攻撃を耐え凌ぎ、機を見て敵軍を海に追い落とし、威信を守り切れば、勝利となります。
しかしながら、勝利条件は、史実同様に困難極まるレベルになっています。敵が2カ所の上陸地点を抑えれるごとに威信-1、軍艦が沈めばその戦闘力分の威信が低下、さらに五稜郭への攻撃や艦砲射撃、イベントで一方的に威信が低下することも。もとより威信は10しかなく、めったに上昇は期待できないので、最終ターンには押し切られることがほとんどです。
事前に数戦、プレイをしましたが、全て、負け。勝てる確率は極めて低いのですが、それでも運がよければと思わせるのが、チットドリブンです。この厳し目のバランスが絶妙で、つい、もう一戦、となるあたりは、さすが作り込まれた中黒デザインです。
それでは、セットアップに沿って、ソロプレイに。イメージは、ちはら会謹製のオリジナルチャートです。
第1ターン、まず、資金が必要な旧幕府軍は、住民に重税を課します。1/2の確率で安泰のはずでしたが、貧しい地での厳しい生活に耐えてかねた住民の怒りが高まり、感情が1つ悪化します。やっと手に入れた3金を加えた18金を、陸軍補給9点、海軍補給6点、残余3金に割り振ります。
貴重な補給を得た旧幕府軍は、土方指揮の衝鉾隊で松前藩兵に攻撃をかけます。が、これがいきなり「失敗」。兵力比が2倍以上のため、最低限の前進はできましたが、必死の抵抗に手を焼きます。気を取り直した第二撃も同じ結果に。う~ん、出足はかなり厳しいゾ。
新政府軍チットで、イベントが起きなかったことと、松岡と甲賀の旧幕府軍の人材が来たことが、救いか?
旧幕府軍は、土方と艦隊を投入して、松前方面で攻勢に出ます。これは奏功し、2回の潰走で、蝦夷に残った最後の新政府軍が撤退します。
これで一安心のはずでしたが、事件で住民との摩擦や海賊船嫌疑がかかるなど、情勢は落ち着かず。澤左衛門が到着したのが、唯一の朗報か(資金調達の円滑化のため、五稜郭に配置)。
第3ターン、新政府軍は反攻準備のため、大きな動きはなし。が、事件が多発。見国隊が合流し、陸軍補給が増えたことはよかったのですが、直後に悪天候で貴重な海軍兵力-回天が座礁沈没!(威信-4!)さらに朝廷の追討令が出て、威信が低下した上に、諸外国との交渉ができなくなります。この時点で、旧幕府軍の威信は4にまで落ちます。
第4ターン、いよいよ、新政府軍の反攻が始まります。品川沖に集結した甲鉄をはじめとする新政府軍艦隊は、宮古湾へ。その後の事件では、アルビヨン号が立ち寄ったものの、新政府軍チットと2枚が追加されるバッドdrに(2/3の確率で、旧幕府軍に資するはずだったのですが)。また、蝦夷地に潜伏する新政府軍の遊軍隊が暗躍し、旧幕府軍の1部隊を消耗させます。最後に、ガルトネル開墾条約を求めてプロイセンが来ましたが、この状況では得策ではないと、旧幕府軍はこれを断ります。
第5ターン、このままではジリ貧になると考えた旧幕府軍は、甲賀源吾の指揮の下、襲撃隊を編成し、新政府軍の出鼻を挫くことを狙います。新政府軍の艦隊が青森まで来たので、ここを襲撃し、結果は、成功!敵の陸軍3ユニットを大混乱に陥れ(プールに)、こちらは、蟠竜が損傷したのみに。
敵の陸軍は、豊富な兵力と補給をもって五稜郭に向かって前進をします。旧幕府軍は大野に胸壁を築いて抵抗しますが、土方率いる衝鉾隊隊が反撃に失敗し、五稜郭へ後退します。松前方面でも、敵が木古内まで前進してきます。騎虎の勢いの黒田隊(長州藩)は五稜郭を攻撃しますが、さすがにこれは失敗します。
第6ターン、旧幕府軍は大鳥圭介が有川に四稜郭を構築し、松前方面で徹底抗戦に。防御時に2drできる強みを発揮し、4度にわたる敵の主攻勢を食い止めます。が、さすがに5度目の防衛では弾薬がつき、やむなく撤退しますが、十二分に時間を稼ぎます。
乙部方面でも土方隊が反撃に出て、敵を押し返し、組んずほぐれつの乱戦で鶉のラインで戦線を安定させます。
これで4カ所の上陸地点を抑えられたため、威信はさらに-2となり、士気崩壊寸前に。
まず、第一手で衝鉾隊を回復し、敵海岸堡の攻撃準備を進めます。
ところが・・・新政府軍の第一手で、いきなり五稜郭への攻撃が成功。それで、威信はさらに-1に。
それでも諦めない旧幕府軍は、衝鉾隊単独で鷲の木を奪還し、最後の希望-土方隊で砂原方面で攻勢に出ます。三度にわたる猛攻の末、ついに新政府軍を海岸から追い落とします。
悲壮な覚悟を決めた旧幕府軍艦隊司令官は、五稜郭で榎本に別れを告げると、太平洋にいる敵艦隊に殴り込みをかけます。5戦力対9戦力という圧倒的に不利な戦力差でしたが、第一次噴火湾海戦は引き分け。そして、迎えた第二次海戦でしたが・・ああ、奮闘ならず、敵の優勢な砲撃を受け、蟠竜が撃沈!この瞬間、旧幕府軍の威信はマイナスとなり、敗北が決定しました。
惜しかった!この時で、残された新政府軍チットは3枚のみ。砲撃成功の確率は27.7%でしたが、まだ、もう1回、海戦ができる補給は残っており、いずれかが成功(敵艦を撃沈)していれば、威信をギリギリ食い止められた可能性がありました。
負けたとはいえ、非常に面白かったです。どうにもならない戦力差に絶望しかけながらも、奇跡を信じて立ち向かう旧幕府軍の姿が、実にいい!軍神こと鹿内氏がよく評価に上げる「このゲームには、物語性がある」んです。ルール量に圧倒されていたり、機会がなく死蔵されている方は、ぜひ、プレイをしてみてください。
なお、勝つまでやるのがちはら会なので、その後、第5戦目をしたところ・・・ついに、勝ちました!序盤に、松岡・甲賀・澤がきて、さらに胸壁と四稜郭も完成。悪天候で千代田形を失ったものの、2回行った外交が奇跡的にともに成功し、ほぼ万全の体制で新政府軍を迎え撃ちます。